「家電量販市場」、猛暑のエアコン商戦でも回復が厳しいワケ知らないと損?業界最前線(4/5 ページ)

» 2022年07月06日 07時00分 公開
[近藤克己ITmedia]

単価アップの流れは、品不足から

 ただ、この品不足は全体的なものではなく、「商品による」という状況でもある。同じジャンルの商品でもメーカーによって、またラインアップによって供給量にバラツキがあり、売るものが全くないという状況ではないという。

 「半導体を始めとした部材不足の中で、メーカーはより利益が取れる高級機種に部材を回しているようだ。そのため、低価格機種の生産数が少なく、目玉品は早々になくなった」「一番の売れ筋であるボリュームゾーンの商品がなくなりつつある」「逆に一部のメーカーはフラグシップモデルが売り切れ、上海のロックダウンの影響を受けなかったメーカーの在庫があるので、振り替え販売ができている」、といった量販関係者の声が聞こえてくる。

 とはいえ、前年に比べると商品が不足しているのは事実なので、夏商戦の売り上げ減少は避けられない。

 「品不足によって販売台数の減少は余儀なくされるが、販売の中心が高価格帯モデルにシフトしているため、売り上げ自体はそれほど大きなダウンにはならないだろう」と分析するのは、流通コンサルタントでクロス代表の得平司氏。

 また別の量販関係者は、「冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの大型家電製品の単価は、5〜6年前に比べると15〜20%ほど上がっている。特に今年は単価アップが顕著だ。エアコンはチラシの目玉商品となる21年モデルが早々に捌け、22年モデルに切り替わったことで6畳用のボトム機種の最低価格が6万5000円と、昨年より1万円ほど高くなっている」と話す。

 先述のとおり、限られた部材を利益の高い高級機種の生産に回していることもあり、単価の高い製品の販売が好調に推移していることで、売り上げの大きな凹みはなさそうだ。

 ただ、一つ懸念材料がある。消費者の財布の行方だ。外出制限がなくなったことで飲食業が回復しているが、それに加えて、7月中旬からは全国旅行支援が始まり、この夏は旅行市場が活性化するのは間違いないところ。

 消費者としても、安い機種がない、自分のほしい機種がないとなると、故障でもない限りは家電製品などの買い替えを控え、その分、ほかのことに消費を回そうという意識が働くことを、市場では懸念している。

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