リテール大革命

市民権を得たセルフレジ、77%が「使う」 ちょっとした盲点はクーポン?Yahoo!ニュースと共同調査

» 2022年08月10日 07時00分 公開
[ITmedia]

 店員に任せず、会計を済ませられるセルフレジ。Yahoo!ニュースとITmedia ビジネスオンラインが共同で企画した調査では、77.8%がセルフレジを「積極的に使っている」または「たまに使う」ことが分かりました。セルフレジが市民権を得たといえる一方、消費者が使いづらさを感じているポイント、ちょっとした盲点も浮かび上がりました。セルフレジメーカーはどのように対応しているのでしょうか。

photo 77.8%がセルフレジを「積極的に使っている」または「たまに使う」と回答(写真は本文とは直接関係ありません、提供:ゲッティイメージズ)

使いづらい? 操作ミスを心配する声も

 調査はYahoo!ニュースが2月18日にオンラインで実施しました(有効回答は2000件)。それによると、セルフレジを使う頻度は「たまに使う」が最も多く40.1%。以下「積極的に使う」(37.7%)、「あまり使わない」(15.0%)、「使わない」(7.3%)と続きました。メリット(複数回答可)は「時短」が最も多く63.4%、以下「非接触」(45.1%)、「多様な決済ニーズに対応できる」(21.0%)という結果でした。

セルフレジの利用率

 一方、消費者からは使いづらいという声も。使いづらい理由(複数回答可)は「システムエラーが起きないか不安」が最も多く29.8%。次いで「スキャンをし間違えないか不安」が28.1%。機械の不具合や操作ミスを恐れる回答が多い結果となりました。このほか「面倒だと感じる」(22.4%)、「使い方が分からない」(21.4%)という結果になりました。

 経験したトラブルでも同様の結果に。「使い方が分からず、セルフで会計を済ませられなかった」(12.1%)などの声が挙がりました。

セルフレジが使いづらい理由
セルフレジでのトラブル

 こうした不満に対し、各社メーカーも手をこまねいているわけではありません。セルフレジを使いやすく、操作ミスも防ぐために知恵を絞っています。

 富士通グループが開発・販売している、セルフレジ端末や量販店向けのPOSシステムでは(1)大型のカメラスキャナーを搭載し、商品スキャンをスムーズにする、(2)商品情報はディスプレイに表示する、(3)スキャン時に商品の金額を音声で読み上げる──などの工夫を施しています。

 NECでも視覚と聴覚、両面の工夫が見られます。(1)スキャン時、画面にアニメーションを流してスキャン方法を伝える、(2)誤って同じ商品を2度スキャンしてしまった場合は、色や音で注意を呼び掛ける、(3)商品スキャン後に確認画面を設け、スキャンした商品に誤りがないか確認を促す──といった内容です。

 カシオ計算機では、店員が電子レジスター、客が自動釣銭機を操作するセミセルフレジを提供していますが、社内売店など限られた環境では、店員不在のセルフレジとして運用しているケースがあります(電子マネー決済のみ)。その場合は、固定スキャナーを接続してスキャンしやすくするなど、操作性を高める工夫をしています。

ちょっとした盲点? 難しい“クーポン問題”

 他方、難しい課題もあります。調査では、自由回答で「クーポンに対応していない」「値引き商品に使えない」などの不満が浮かび上がりました。

 これに対し、富士通グループは「クーポンは紙の券を回収する必要があるものや、商品とセットで登録するなど店員が確認する必要があることが多く、店員対応としています」と説明します。ただし「デジタルクーポンへの対応は可能」といいます。

 同様に「バーコードなしの値引きシールなど、マニュアル値引きは、店員による値引き操作で対応することになります」(同社)。一方、店舗が値引き用のバーコードラベルを導入していればセルフレジでも対応できるため、同社は「セルフレジの導入前に、値引きバーコードラベルでの運用に切り替えることを提案している」そうです。

 同じくNECも「バーコードでのクーポン読み取りに対応済です。ただし、店舗側でバーコードでのクーポン発行を実施してもらう必要があります」と説明します。値引きについても、店舗側がバーコードを発行すれば対応可能ということです。

 カシオも「機能としては対応可能ですが、運用上難しい部分があります」と指摘します。「クーポンなどは一般に紙やチラシ、カードでの媒体による配布になると思います。セルフの場合は目視チェックができないので、不正利用されるケースが考えられます」

進化系セルフレジ 次の姿は?

 このようにちょっとした盲点はあるものの、市民権は得ているセルフレジ。今後はどのように広がり、進化していくのでしょうか。

photo セルフレジはスーパーだけでなくコンビニ、外食などにも広がっている(写真は本文とは直接関係ありません、提供:ゲッティイメージズ)

 小売り業界に詳しいEYストラテジー・アンド・コンサルティングの持田圭介氏(消費財・小売セクター シニアマネージャー)は「最近のセルフレジのトレンドとしてセルフレジを使う業界の拡大、セルフ化する仕組みの多様化が挙げられます。これまではスーパーが中心でしたが、コンビニ、外食などにも広がっています」と話します。

 また、最新の技術を取り入れたセルフレジも登場しています。「買い物かごから自分でスキャンして会計するセミセルフレジから、ICタグを使って買い物かごを載せるだけで商品登録を完了するタイプ、さらには店内のセンサーでかごやカートに入れた商品を登録したり、スマホアプリや専用のデバイスを貸し出して買いまわりながら自分でスキャンし、レジ操作を簡単にするタイプなど、多様化しています」(持田氏)

 その一方、持田氏は「利用者から支持されるためには、利用者の負担を減らして簡単な操作にすることや読み取りの精度向上、アプリであればタップや画面遷移の回数を減らすような磨き上げが今後も重要になってきます」とも指摘します。昨今、非接触化や店員の負担軽減などの追い風もあり、支持を集めているセルフレジですが、これからも使い続けてもらう存在になるには、さらなる進化が求められそうです。

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