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退職か、働かないおじさん化か──50代社員を“用済み”扱いする社会のひずみ河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/4 ページ)

» 2022年08月12日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 今回はまず、大手企業に勤める大和さん(50代男性)の話をお読みください。

 うちの会社は52歳になるとセカンドキャリア研修を受けさせられます。通称“肩たたき研修“です。研修のことは、先輩からも聞いていたので「まぁ、仕方ないなぁ」と考えていました。

 ところが、それだけで終わりませんでした。そのあと上司との面談があって、早期退職に希望するかどうかを聞かれたんです。これはさすがにショックでした。というか、怒りを感じました。

 つい先日までかなり多忙で、会社からの期待も受け、順調に過ごしていたんです。なのに突然、別セクションに異動を命じられ「早期退職するという選択もあるけど……」って。つまり、私は用済み、と言われたんです。怒りに任せて、早期退職に応募します、と言いそうになりました。でも、いったん、頭を冷やした方がいいと、グッとこらえました。

 おそらくこのままだと、異動先でかなり暇な職務に就くことになります。客観的にみれば、もう居場所はないわけですから、やめた方がいいですよね。50歳過ぎての転職は厳しいけど、用済みと言われた会社で、くすぶってるよりましです。

 ただ、自分ではもう少しこの会社でやりたいことがある。やり残した仕事といってもいいかもしれません。毎年、55歳をすぎた社員が数人、関連会社に再雇用されます。社内の選抜試験にさえ合格すれば、面接の切符をもらえます。再雇用先の会社の役員面接です。

 他社からも受ける人がいますし、年々狭き門になっているのですが、そこまで踏ん張ろうかな、と考えています。

 周りからは、会社にしがみついてると思われるでしょうし、会社は70歳までの雇用が努力義務化されているので、必死で追い出しにかかるでしょうけど。

 以前、河合さん(筆者)が「自分が思うほど周りは自分に興味はない」って言ってたので、その言葉を信じで、やりたいようにやろうと思います。

本当に「働く側に問題がある」のか?

大和さんは会社から、退職か異動先の閑職で耐えるかを迫られた(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 このところ、やたらと「働かないおじさん」というワードを、目にするようになりました。

 私の記憶では、この不名誉かつ辛辣(しんらつ)なネーミングは、2014年に「追い出し部屋」が社会問題になった頃から使われています。当時は「使えないおじさん」「フリーライダー」と表現されることもありました。

 今から8年も前の出来事です。なのになぜ、再び、「働かないおじさん」アゲインなのか?

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