近年のキャンプブームで、無料のキャンプ場に人が殺到し、ごみの放置や騒音を引き起こす「オーバーツーリズム」(観光公害)が深刻化している。こうした中、地元企業と自治体がタッグを組み、キャンプ場の有料化に踏み切るケースが相次いでいる。民間の知見を生かしたマネジメントで大きな効果が表れているといい、「マナーが見違えるように向上した」との声も聞かれる。
「来場客の目に余る行動に、近隣住民から多くの苦情が寄せられていた」
こう話すのは、埼玉県飯能市の観光・エコツーリズム推進課の担当者だ。同市の飯能河原はBBQなどが楽しめる無料のキャンプ場として人気が高かったが、来場客のマナー違反が目立つように。「大声で騒ぐ」「BBQ客同士で喧嘩する」「河原にゴミを埋めて帰る」「大音響で音楽を流す」「迷惑駐車をする」――といった例が近年、多発していたという。
近隣住民からの相次ぐクレームを受け、市は今春の大型連休に合わせ、「火気使用等(BBQなど)に関する予約・有料化実証実験」(4月21日〜5月8日)を行った。現在、第2回の有料化実証実験(7月23日〜8月28日)を行っている。
河原に有料スペースを設け、利用はネット予約制を導入。利用人数は1日上限500人とし、利用料金は河川美化などの費用に充てるため、1人1000円(小学生以下は無料)に設定した。
この結果、今年4月21日〜5月8日の来場者数は1434人となり、無料だった前年同期の4961人から4分の1程度に減少。近隣住民からも「マナーがよくなった」「騒がしくなくなった」との声が寄せられたという。
1回目の実証実験は、河川を管轄する埼玉県と、飯能市、奥むさし飯能観光協会、それにコンサルタント事業を手掛ける「地域デザインラボさいたま」(さいたま市浦和区)の4者が協力して実施。同社は埼玉りそな銀行の100%子会社で、持続可能なまちづくに向けた公共施設マネジメントや、官民連携の施策に関するコンサルティングを行っている。
民間の知見を生かしながら、有料化にかかるマンパワーやオペレーションを整備してきた。今後は同観光協会が運営の主体となり、有料化の本格導入に向けた準備を進めていくという。
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