JR山手線の渋谷駅で、線路に財布を落とした男性が非常停止ボタンを押し、駅係員が激高する様子を映した動画がSNSで拡散し、波紋を呼んだ。駅係員の激しい罵声が問題視された一方、男性の行動にも多くの批判が集まった。あのとき、何が起きたのか。そして、身勝手な行動を取る利用客に対して、企業はどう向き合うべきなのか。JR東日本と、クレーム対応に詳しい弁護士に話を聞いた。
JR渋谷駅で男性と駅係員が口論する様子を映した動画がSNSで拡散し波紋を呼んだ(画像はイメージ、写真AC)
渋谷駅ホームで男性と駅係員のトラブルが発生したのは、7月4日午後8時ごろのこと。SNSで拡散した男性が撮影したとみられる動画は、激しく怒鳴る駅係員と、男性が口論する様子を映し出していた。
男性: 何でお金取ってくれないんですか
駅係員: なんなんだその態度はてめえ
男性: 4万円が財布から出てるんですよ
駅係員: どんだけの人に迷惑かかってんだよ
「動画につきましては、7月4日午後8時頃に危険な行為に及んでいたお客さまの対応をしている場面となります。お客さまが線路をのぞき込む、線路に降りようとするといった危険な行為をされ、駅係員がお客さまを制止、安全な場所へ移動した後のやりとりになります」
JR東の担当者は動画について、こう説明した。動画には映し出されていない部分で、男性の危険な行動があった様子がうかがえる。両者が口論に至った経緯について、担当者は続けて話す。
「山手線外回りホーム(1番線)にて、線路に財布と現金を落としたお客さまが線路をのぞき込む・線路に降りようとするといった危険な行為をされており、駅係員が制止を致しました。当該のお客さまに安全な場所に移動していただきまして、事情をお聞きし、線路に落とした財布と現金を拾う事を説明させていただきましたが、待っていただく事に納得されなかったお客さまがホーム上の列車非常停止ボタンを押されました」
JR東によると、動画に映っていない場面で男性が線路に降りようとするなどの危険行為があったという(画像はイメージ、ゲッティイメージズ)
「危険な行為をされたこと、および必要のない列車非常停止ボタンを押されたことにより他の多くのお客さまにご迷惑をおかけしていることに対し、駅係員が強い口調で注意を促しました」
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