中小企業庁の「起業後の企業生存率の国際比較」(17年度)によれば、起業後5年間でドイツでは59.8%、英国は57.7%、フランスは55.5%、米国では51.1%の企業が市場から退出している。5年で半分もてばいいというレベルだ。しかし、日本では市場から退出した企業は、なんと18.3%と異次元の少なさだ。
しかし、そういう「異常な社会」を維持していくには、誰かが人身御供のように犠牲にならなくてはいけない。それが、「安いニッポン」を支える低賃金労働者だ。
今や日本の低賃金は世界がドン引きするレベルになっていて、何かと日本人が「下」に見てきた韓国にまで抜かれてしまった。「雇用を守るため、国が人為的に倒産を防いで、企業の新陳代謝をストップさせる」という独自の経済政策を長くとってきたツケを支払わされていると言ってもいい。
映画やドラマでは、ゾンビが徘徊(はいかい)する世界で、生き残った人々同士が食べ物や安全な住処を奪い合うシーンが定番だが、日本社会も既にそうなりつつある。
ゾンビ中小企業があふれかえるこの社会では、フルタイムで働いても年収200万円にも満たない。「賃金を上げてくれないと生きられない」と叫んでも、焼石に水のようなバラマキでゴマかされるので、低賃金労働者から心身を壊して死んでいく。そして、その大量の屍(しかばね)を貪ってゾンビ中小企業がさらに増える。「地域の雇用を守るためにもっと手厚い支援を」とうめきながら――。
ゾンビ映画なんかよりも、日本社会のほうがはるかにホラーだと感じるのは筆者だけだろうか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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