なぜ「ゾンビ企業」は宮崎に多くて、沖縄は少ないのかスピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2022年08月23日 09時32分 公開
[窪田順生ITmedia]

ゾンビ企業が多いトップ3

 さて、このような「ゾンビ企業3原則」を踏まえれば、ゾンビ企業が多いトップ3は納得だろう。

 「福島県」「宮城県」はまさしく(1)の代表格で、コロナ禍以前から東日本大震災時に手厚い中小企業支援がなされた地域だ。融資の特別措置も行われている。そこに加えて(2)の中の「低賃金」も当てはまる。21年の最低賃金は福島県が828円で、宮城県は853円となっており、東京都(1041円)や大阪府(992円)と大きな開きがあるのはもちろん、全国平均の930円よりも下回っているのだ。

 「宮崎県」に関しても、ゾンビ企業が延命のために固定費をかなり低く抑えられることが大きい。21年の最低賃金は821円で、47都道府県の中で2番目に低い水準だ。また、家賃も安い。総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果」によれば、宮崎県の家賃は3万8353円で、47都道府県の中でワースト3となっている。つまり、全国でもトップクラスの低賃金、低家賃という経済環境が、ゾンビ企業の「延命」を後押ししている可能性があるのだ。

ゾンビ企業の都道府県別図(出典:帝国データバンク)

 さらに、トップ3には(3)の「後継者」という要素もある。 帝国データバンクの『全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)』によれば、47都道府県別の後継者不在率で宮崎県は51%で8番目、福島県は54.2%で9番目に少ない。

 これらの「3原則」には、ゾンビ企業が少ないトップ3にも当てはまる。

 東京や大阪は中小企業支援や融資を受けられる体制は充実しているが、一方で賃金も家賃も47都道府県の中で突出して高い。また、都市部ということで、中小企業経営者の子も他の大企業などに勤務してしまうケースが多く、ブラックボックス経営を引き継いでくれない。実際、後継者不在率データで見ても、東京都は全国平均を上回る61.5%で、大阪府も63.9%である。

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