(3)はちょっとイメージがつきづらいかもしれないが、ゾンビ企業存続にはこれに左右される。「経営の透明性」に関わる話だからだ。そもそもゾンビ企業に限らず、中小企業の経営というのは基本的にブラックボックスだ。
経営者が株主を兼ねていることが多いので、従業員や外部の人間に経営の細かい数字を開示する義務もない。そのため、家族を役員にして報酬を払ったり、自分で使うベンツを社用車としたり、キャバクラ通いを交際費として計上することもできる。ちょっと言い方は悪いが、経営者が会社を私物化できるので「やりたい放題」なのだ。そのため、意図的に利益を抑えて赤字にして、法人税を逃れている経営者もいる――なんて話もよく言われている。
このように中小企業特有のブラックボックス経営は、ゾンビ企業になるとさらに拍車がかかってしまう。例えば、中小企業支援の現場でよく聞かれるのは、「設備投資のため」という名目で自治体に申請をして、補助金を受け取って最新の機材を購入した後、すぐにそれを「換金」してしまう手法だ。もちろん、未使用のものをすぐに売却して、しかもそれを報告しないなどは明らかな犯罪行為である。
こういうお天道様の下でおおっぴらにできない「ブラックボックス経営」は、アカの他人に託すことは難しい。もし外部から招へいした後継者候補が知ったら、「こんなヤバい会社は継承したくない」と逃げられるのがオチだし、自社の従業員など論外だ。
これまでは「今期も赤字だ」なんて言って安い給料しか払っていなかったが、実は経営者と家族にはそれなりに報酬を払っていたなんて会計のカラクリがバレてしまうからだ。この問題をクリアーできるのは、わが子や親戚などの身内を後継者にするしかない。実際、かつてよりも減少したが、いまだに日本企業の4割弱がわが子を後継者にしている。
「身内の後継者」がいるということは、会社の私物化やブラックボックス経営が次世代に引き継がれるので、それだけゾンビ企業が存続する確率も高くなるというわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング