よみがえったドムドムハンバーガー 3倍の「100店舗を目指さない」ワケあの店は今(2/2 ページ)

» 2022年08月26日 07時00分 公開
[秋山未里ITmedia]
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指針は「相手に心を尽くす」

 藤崎社長は、夫の病気をきっかけに39歳で初めて就職。渋谷109のアパレルショップ店員と居酒屋店員の仕事を経て、独立して飲食店を経営。新橋で2店舗を運営していたとき、料理の味やていねいな接客を見込まれてドムドムフードサービスの商品開発担当として引き抜かれたという異例のキャリアの持ち主だ。

 常識にとらわれない藤崎社長の経営術は、参考にしている本やマーケティングのメゾットはないという。

 では、何が指針となっているのか。それは109の店員時代や、専業主婦だった頃から大事にしていた「相手に心を尽くす」という信念だという。

 「マーケティングとは『お客さまは何が欲しいのか』を真剣に考えることだと思います」

藤崎忍社長(筆者撮影)

 この信念を気付かせてくれた出来事がいくつかある。

 1つは、渋谷109のアパレルショップで社員をしていた頃。マネキンにも着せていた、人気商品のワンピースがあった。しかし、藤崎氏が外出して戻ると、ワンピースが売れていなかった。急にどうしたのだろう……と確認すると、そのワンピースとセットでマネキンに着せていたネックレスが全て売れてしまっていて、コーディネートが崩れてしまっていた。

 つまり、お客が求めているのはワンピース単体ではなく、すてきなコーディネートだった。

 「お客さまがより良くコーディネートできるように提供する──という思いがきちんと伝わる店舗だったら商品は売れるし、伝わらなければ売れない。心を尽くすというのは、そういうことです」

ギャル文化がにぎわう渋谷109に店を持つアパレル企業に入社し、専務まで務めた藤崎氏。写真は当時の店員仲間とのプリクラ(右上が藤崎氏)

 また、居酒屋を経営していた頃は、おいしい料理を提供するだけでなく、居心地の良い空間を提供することも心掛けていた。座席も、元気なグループと静かなグループを適した配置で案内するように心掛けたり、個人のお客も静かに過ごしたい人か、スタッフと会話したい人か、はたまた友人を作りたいのかといったことを考えたりして、接客をしていたという。

居酒屋を開業した際のメンバー。右から2番目が藤崎氏(画像はドムドムフードサービス提供)

 こうした積み重ねにより築かれた「相手に心を尽くす」という信念で、ドムドムフードサービスの経営も行っている。

 藤崎さんはこれまでのドムドムの経営について「これを改善すればスタッフが喜ぶだろう、これをすればお客さまが喜ぶだろうというものを一つ一つ見つけて実施していくことの積み重ねでした。何に苦労したか、何が難しかったかというのもよく聞かれますが、発展途上なのであまり苦労や大変と思うことはありませんでした。困ることがあれば何をすべきかを考えて、一つ一つ対応してきました」と笑って話す。

 ドムドムバーガーは店舗数の明確な拡大計画はないというが、「これからもファストフードの枠にとらわれず、さまざまなチャレンジをして行きたい」と話す藤崎氏の姿勢から、今後もその勢いは止まらず続くだろうと確信させられる機運を感じた。

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