川崎市のJR川崎駅地下街に「世界一短い」とギネス認定されたエスカレーターが存在する。高さ83.4センチ、段差はわずか5段。愛称は「プチカレーター」。これを目当てに訪れる海外の観光客もいるなど、ちょっとした名所になっているという。なぜ、これほど短いエスカレーターを造ったのか。いかにして、名所化に至ったのだろうか。
世界一短いエスカレーターは、商業施設「川崎モアーズ」の地下2階にある。設置されたのは約30年前の1989年10月。この3年前、86年10月に川崎駅東口の再開発事業で地下商業施設「川崎アゼリア」が開業。両施設を結ぶ連絡通路を建設することになったが、アゼリアの地下通路が、モアーズの地下1階と2階の間に位置していたため、その段差を解消するためにエスカレーターが設置されたという。
でもなぜ、これほど短いエスカレーターになったのか。モアーズを運営する横浜岡田屋(横浜市西区)の担当者は次のように話す。
「工事着工後に、エスカレーターを設置する床下に太い梁(はり)があることが判明しました。一時は工事断念も考えましたが、お客さまへのサービスの一部として、急きょ短いエスカレーターを設置することになりました」
上り向きのエスカレーターの下側に目を向けると、5段の階段になっている。本来はエスカレーターにする予定だった個所だ。このため、5段の階段を上がらなければ、エスカレーターに乗ることができない。
このままでは何とも中途半端で有用性に欠けるエスカレーターだが、このとき、同社の当時の社員が、直感を働かせたという。「ひょっとしたら世界一の短さではないか」
同社はエスカレーターが完成した89年10月、ギネスワールドレコーズ社に申請。ギネス社が審査し、ギネスブック91年版で「世界一短いエスカレーター」として認定された。
ギネス認定でPRに成功した同社は、さらにエスカレーターの愛称を利用客から募集した。約1500件に上る応募には、「ミニエスカ」や、段差が5段であることから「ファイブステップ」などのネーミングが寄せられたという。これらの中から「プチカレーター」という案を選出した。
ギネス認定、愛称決定で話題作りに成功し、テレビや新聞などメディア露出が増加。コロナ禍前はプチカレーターを目的に現地へ訪れる外国人観光客も多かったという。
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