日興AMが新シリーズの投入に乗り出す背景には、昨今のインデックス投信の隆盛もある。若者がネット証券で投資を始める際に、つみたてNISAを入り口とする場合が多い。そしてつみたてNISAは、金融庁が列挙した指数に連動するもの、つまりインデックス投信しか投資対象として認められてない。そして、どの指数に連動するかという違いはあっても、基本的にインデックスファンドはコスト競争になりがちだ。コスト以外に、差別化のポイントがほとんどないからだ。
そんな中で、インデックスと同じくパッシブファンドの仲間であるルールベースファンドに着目したのがトレイサーズだ。当初の2本はレバレッジを掛けているため、つみたてNISAの対象には入らないが、「レバナス」などレバレッジファンドの競合にはなるだろう。「まだまだ投信のマーケットは大きくなる。インデックスと合わせて、ルールベースファンドを新しい投資家に向けて提供し、新しい投資資金を大事にしていきたい」(有賀氏)
コストについては、信託報酬を0.1991%に設定した。「業界最低水準の運用コストを目指す」ことを掲げ、インデックスファンドでトップの三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」シリーズは約0.09〜0.22%の信託報酬水準だ。複数商品を組み込みレバレッジを掛けた「3倍3分法ファンド」の信託報酬0.395%と比較しても、比較的低コストだ。
またS&P500ゴールドプラスとグローバル2倍株では、2倍のレバレッジをかけている。100万円の資金で200万円分を運用するわけで、100万円分の運用に対するコストで見れば、実際の半分の信託報酬と考えることもできる。最も人気のある投信である、eMAXIS Slim米国株式(S&P5009)の信託報酬は0.0968%であり、0.1991%という信託報酬の額は絶妙だ。
「レバレッジものの信託報酬は高いものもあるが、コストにシビアな投資家に受け入れていただけるように、少なくとも『2倍がかかっている割には安い』と思ってもらえる水準を目指した」(有賀氏)
レバレッジ商品2本からスタートするトレイサーズだが、レバレッジ専用ファンドという位置付けではない。例えば、指数にはS&P500やTOPIX、日経平均などのほかにもさまざまなものがある。そんな各指数に連動した商品も今後のターゲットだ。また例えば「高配当ファンド」もルールベースで実現できる。配当利回りのランキングを元に、上位3分の1を投資対象として、時価総額加重平均で投資するなどの手法だ。
現時点では年間何本などの投信をトレイサーズシリーズで展開するかは決定していない。しかし、「シリーズとして巨大化していく必要がある。(純資産額)何百億円というレベルではなく、桁があと1つ2つ必要だ」と、有賀氏は拡販に意気込みを見せる。
つみたてNISAという追い風を受けるインデックスが隆盛の昨今、パッシブファンドの一角に入れるかに注目だ。
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