アクティブの反対はインデックスではない? 日興AM、ルールベースの新シリーズ「トレイサーズ」投入の狙い金融ディスラプション(1/2 ページ)

» 2022年08月31日 14時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 日興アセットマネジメント(AM)が8月31日、新たな投資信託のシリーズを投入した。名称は「トレイサーズ」。ファンドマネージャーが銘柄を選定して投資する、いわゆるアクティブファンドに対して、あらかじめ定めたルールに沿って売買を行う「ルールベースファンド」だ。

 ネット証券や銀行のネットチャネル専用の商品とし、紙の資料などを廃すことでコストも抑えた。昨今、ブームとなっているのはインデックス投信だが、そこにひと味加えることで、差別化していく考えだ。

 「アクティブの反対は何か? インデックスとは限らない。反対はパッシブだ」と商品開発部長の有賀潤一郎氏は話す。パッシブ投資とは、投資において人の判断を入れず、事前に決めたルールに沿って投資するものを指す。インデックスファンドもパッシブ投資の1つだし、より複雑なルールに沿って投資するものもある。

 「非アクティブ型の選択肢と可能性は、もっと広くて柔軟だ。ルールベースを積極的に加えることで、もっと魅力的になれるはず」(有賀氏)

米国株+金へ投資する新ファンド

 そうしたコンセプトに基づき、トレイサーズシリーズの第1弾として、米国株式と金投資を組み合わせた「Tracers S&P500ゴールドプラス」を投入する。これは代表的な米国株式指数であるS&P500と、昨今のインフレで注目される金に、同額を投資するファンドだ。

 「金が長期的なインフレに伴って上昇が期待できることに加え、人気のS&P500に金を加えることで、逆相関によるリスク分散効果もある」と有賀氏。投資においては、それぞれが異なる値動きの商品を組み込むことで、期待リターンをそのままにリスクだけを減らすことができる。

 有賀氏は2019年に話題となった「3倍3分法ファンド」の生みの親でもある。こうした投信の運用で培ったノウハウを、新シリーズにも生かした。S&P500ゴールドプラスは資金の2倍を運用するいわゆるレバレッジファンドで、金はすべて先物を使って運用する。資金の85%はS&P500の現物を購入し、残り15%を証拠金としてS&P500の先物15%分と、資金100%分の金を運用する形だ。

 実運用額は資金の2倍だが、先物を使うため、金に関しては為替の変動リスクを受けないという特徴もある。

 トレイサーズでは、そのほか既存の「グローバル2倍株」の名称を変更し、「Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)」としてネット販売専用とすることで信託報酬も引き下げる。

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