観光シーズンなのに沖縄でレンタカーが不足しているワケえっ、中古車を買う人も(1/4 ページ)

» 2022年09月03日 07時45分 公開
[長濱良起ITmedia]

 「レンタカーが高くて借りられなかったので、中古車を買いました」。夏の沖縄観光シーズン真っ盛りの8月。愛知県からいとこが子連れで旅行に訪れることになり、一緒になってレンタカー探しに奔走した沖縄県在住の櫻田知里さん(27)。

 4日間で約6万円と想像を超えた額に「だったら『買ってしまえ』って思って」と、沖縄を離れる同僚から10万円で車を買った。「買ってすぐに誰かに売ればいいかなと思って」と、ペーパードライバーで普段車に乗らない櫻田さんの元には、買い手を探す薄ピンクの軽自動車が鎮座する。

 このように沖縄のレンタカーの価格が高騰したのはなぜか――。新型コロナの影響で観光需要が落ち込んだことで事業規模を縮小せざるを得なくなった事業者が、今年の需要回復に対して物的にも人的にも対応できず、供給が追い付かなくなってしまったからだ。

沖縄 沖縄でレンタカー不足が深刻化している

 櫻田さんのいとこである天野明日香さん(31)は「6月の段階で10件以上のレンタカー屋さんを調べましたが、空きはほとんどなく高額でした」と話す。最終的には櫻田さんの友人が車を貸してくれ、購入した軽自動車の出番はなかったが、車のある沖縄観光が実現したことで「堤防から見た夕日から、自然のエネルギーを身体で感じることができました」と、子どもたちも一緒にたくさんの思い出をつくれたようだ。

 沖縄の交通事情を象徴する言葉はずばり「車社会」だ。2003年に沖縄都市モノレール(ゆいレール)が開通するまでは、陸路はもっぱら道路交通だった。沖縄戦直前の1945年3月までは「沖縄県営鉄道」、地元では「ケービン(軽便)鉄道」と呼ばれていた鉄道があったが、戦後は一貫して道路交通のみの歴史が続いた。

沖縄 2003年に開通した沖縄都市モノレール(画像提供:ゲッティイメージズ)

 とはいえ、そのモノレールは那覇市とその北隣・浦添市の一部にしか開通していないため、県民の移動手段は今でも大半の場合、自動車だ。バスは那覇市内のオフィス街への通勤や高校生などの通学などで使われることが多いが、住んでいる地域によっては路線的に不便なことも多い上に、慢性的な渋滞から定時運行が難しいため、普段から路線バスに乗る人は少数派だと言える。

 そんな沖縄で「車が使えない」となると、県外からの観光客にとっては大問題だ。那覇市内の街歩きや、直通バスがある沖縄美ら海水族館を楽しむ分にはさほど問題はないが、もしもキレイな海にも沖縄そばの名店にも夕日絶景スポットにも1日で行きたいのであれば、結構な冒険になってしまう。

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