PayPay証券が新社長のもと、戦略を強化する。6月28日付で社長に就任した番所健児氏はソフトバンク出身で、みずほ銀行との共同事業であるJ.ScoreやPayPayのフィンテック周りを見てきた人物だ。
8月に満を持してPayPay内ミニアプリとして、PayPay資産運用をリリース(記事参照)。グループシナジーの強化を進めるなか、PayPay証券はどこに向かおうとしているのか。番所社長に聞いた。
ーーどんな証券会社を目指すのか。どういった人にどんなサービスを提供するのか?
番所 証券業界を広く見た場合、ネット証券はセミプロのトレーダー層が利用している。オフライン(対面)の大手は、富裕層の方が対象で、年齢層も比較的高めだ。社会課題に向き合ったときに、資産運用は誰がやらなければいけないのかというと、若い人。これから資産形成層に入っていく人たちだ。
しかし、海外、長期、分散といっても誰も見向きもしない、貯蓄から投資といっても……ということがずっと続いてきた。
そうした資産形成をやっていかなくてはならない人に対して、身近な存在でありたい。そのためには証券会社という形にもこだわっていない。
ーー投資観を教えてほしい。ポイント運用などカジュアルなものを入り口として、最終的には自分で銘柄選びができたり信用取引ができるようなスキルを身に着けていってほしいと考えているのか。それとも資産運用とはそういうものではなく、長期投資が基本であまり複雑なことをしなくてよいと考えているのか。
番所 後者に近い。まずポイント運用を体験してみてほしい。そのあと信用取引だというのは絶対ない。20代、30代の人を相手にしていくので、長くお付き合いいただけると長期運用がベースになる。
これまでは規模も小さくやってきたが、資産運用ミニアプリを皮切りに、PayPayというプラットフォーマーと組んでやっていくので、さまざまなお客様を相手にすることになる。PayPayがまさにそうであるように、われわれも多様な顧客のニーズに応えていく。
ーー初心者向けとしてスタートしても、その後、フルラインアップ向けに方針を転換する証券会社もある。どんな商品構成を考えているのか。
番所 既存の証券会社のようなフルラインアップ型を目指すのか? というと、少し違う。証券会社がフルラインアップをやろうとすると、大きな図体が必要になる。果たしてそこにお金をかけるのか? ネット証券のブローカレッジ市場、セミプロ市場は縮小していくのではないか。
むしろ、これまで預金という現金だったものが、これから資産運用の世界に入り込んでくる。ここにお金を使って事業を育てていく。
日本は極めて特殊なマーケットだ。株では個別株の売買がこれだけ行われており、ミセスワタナベに代表されるようにFXも盛んだ。一方で、金融総資産をみたときには現金の割外が非常に高い。
われわれの仮説は、投資がまだまだみんなのものになっていないということ。現金を代替する市場はブルーオーシャンだ。なにかのきっかけで、現金が運用商品に振り替わってくるタイミングがくる。
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