「前の会社の方が良かった……」 何度も転職に失敗する人の共通点とは?“沼る”ビジネスパーソンの共通点(3/3 ページ)

» 2022年09月26日 07時00分 公開
[菊地央里子ITmedia]
前のページへ 1|2|3       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

キャリアは掛け算で考える

――そもそも転職を繰り返すことはダメなのでしょうか?

松本: この3年で営業を学び、次の3年で人事を学ぶという目的意識が伴うもの、会社で言うならば意味のある人事異動のような転職はアリです。自身の提供価値をずらし重ねていく=キャリアを掛け算する転職を繰り返すことは、市場価値の向上につながります。

 その一方で、前述のように「今の環境が嫌だから」という理由で、同業内での転職を繰り返すことは、自身の価値を目減りさせることになります。

沼1 キャリアを掛け算させる転職は繰り返しても良い(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

――なぜ価値が減ってしまうのでしょうか?

松本: 同業内で転職を繰り返し社会人歴だけが長くなってくると、採用側はその人をその業種の専門家だと見なします。武道で例えるなら、剣道8段や空手8段のような達人だと思われるのです。ですが実際のところは、剣道2段、空手2段……といろいろやってみた結果、段数は合計8段になりました、というようなもので、その社会人歴に適したような専門性を持っているとはいえない上、同業内で同じような仕事を続けていたためキャリアの掛け算もできないのです。

――転職を繰り返さないために、自分を変える以外で、こういう会社を選ぶべきという指針はありますか?

松本: 「やりやすい」「やりたい」という目的で選ぶこともできますが、「その会社で自分が出世できるか」「その会社が自分のキャリアに入ることで、一生使える名刺代わりになるか」という視点で選ぶことも重要です。

 例えば、「ミシュランをとったレストランで働いたことがある」との経歴があると、本人の能力とは関係なく、そこの出身だということが看板になります。もちろんそうした会社で働くことは大変ですが、きっちり働き通せば次のキャリアがで大きく羽ばたくための柱になります。

沼1 「やりやすい」「やりたい」以外の視点を持つ(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 また、「アルムナイ」がある会社もおすすめです。アルムナイとは、退職者と現職者が集まる同窓会やOB・OG会のようなものです。退職者が勤務していた先のアルムナイに所属しているということは、その会社が嫌で辞めたわけではない、現在も顔を出せるくらいのキャリアがあるということです。

――アルムナイで退職者と交流し、退職者のその後のキャリアや進路を参考にするのですね

松本: その通りです。退職者がいなくなることはないので、アルムナイのネットワークは拡大する一方です。また、信用社会でもありますので、アルムナイの力を借りて自身の信用を拡大させ、その中で次のキャリアを探す、紹介してもらうという方法が使えます。転職はエージェントを介すのが一般的ですが、こうした転職方法も視野に入れるといいでしょう。

松本利明(まつもと・としあき)

photo

人事・戦略コンサルタント。

HRストラテジー 代表。日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員。

外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の人事の改革に従事し、5万人のリストラと6500人を超える次世代リーダーの選抜や育成を行った「人の目利き」が持ち味。最近は企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を生かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンにライフワークとして提供し、好評を得ている。

著書に、『できる30代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『稼げる人稼げない人の習慣』(日経新聞出版社)、『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)、『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)など、ベストセラー多数。英国BBC、TBS、日本経済新聞などメディア実績多数。講演実績多数。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.