市場連動型とは、その名の通りJEPXの取引価格に応じて電気料金が変動する料金体系を指す。電力の取引価格と販売価格を連動させられるため、比較的リスクが少ないことが新電力側のメリットとされる。最近では、Looop(Looopでんき)や楽天エナジー(楽天でんき)が導入を発表した。
Looopでんきは7月28日に「『Looopでんき』今後の電力サービス方針ならびに約款改定に関するお知らせ」を発表。2段階で料金体系を変更すると発表し、第1弾として9月1日、これまで徴収していた「燃料費調整単価」の算定方法を変更した。具体的には、石油や石炭など化石燃料価格に連動した算定方法から、JEPXの取引価格に連動する形へと変更。今冬には第2弾として、現行のプランに代えて、時間ごとに単価が変動する市場連動型料金プランの導入を予定している。
楽天でんきは9月20日に「『楽天でんき』電気需給約款(低圧)および料金表改定のお知らせ(燃料費調整から市場価格調整への変更)」を発表。11月1日から、従来の燃料価格に連動した「燃料費調整単価」を、JEPXの取引価格に連動した市場価格調整単価に変更する。
両社とも発表の中で、市場連動型は電力取引価格が安い時期には請求金額が安くなるという消費者側のメリットを説明しているが、4月1日以降のJEPXスポット市場のシステムプライス推移(スポット取引の約定計算で得られた全国大の売り入札曲線と買い入札曲線の交点の価格)を見ると、6月下旬以降は一段と高値安定になっており、以前の水準に戻る可能性は高くないとみられる。また、実際に請求される電気料金が読みにくいことから、市場連動型を忌避する消費者も少なくない。
市場連動型導入の動きは、新電力側の収益性を向上させる効果があっても、顧客離れを招きかねない“茨の道”といえるだろう。一般消費者向けに電力・ガス切り替えプラットフォーム「エネチェンジ」を提供しているENECHANGEの22年12月期第2四半期決算では、プラットフォーム事業の売上高が前年同期比で47%増となった。新電力の切り替え需要などの増加が一因だという。
物価高などによる節約志向の高まりから、日常的に発生する光熱費はコストカット先となりやすく、これまで以上に新電力への視線は厳しくなっている。従来「安さ」を売りに成長してきた新電力各社の倒産・自己破産・サービス停止ドミノは止まるのか。先行きは暗い。
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