事務局が策定した要領では「事前審査」として、旅行事業者などに対して、キャンセルのあった旅行商品の予約日やキャンセルのあった日、旅行商品名などを記載した予約リストの提出を求めている。提出があったリストを事務局が検査し、申請内容に疑義がある際は予約内容やキャンセルのあった日などを証明する書類の提出を求め、確認。その後、観光庁が事務局へ事前に支払った委託費からキャンセル対応費用が支払われる流れだ。審査は、事務局が担当者向けにマニュアルを作成し、マニュアルに沿って表計算ソフトを用いて行った。
“二重チェック”も行っていた。観光庁は事務局に対し、事前審査を終えた申請について、あらためて審査する「事後審査」を指示。これを受け、事務局は21年5〜8月の期間で、申請予約件数の多い「年末年始の全国に係る旅行」と「緊急事態宣言に伴う全国に係る旅行」の約358万件から事後審査の対象を無作為に抽出。その中で申請内容に疑義があった旅行事業者などの申請6086件を対象に審査を実施。その結果、502件でキャンセル対応費用の二重申請や、そもそも要領に定める期間に該当していなかったことが発覚し、観光庁に報告していた。
会計検査院は、事前審査において、大量の申請を審査する人員の余裕がなかったことを指摘。複数の審査担当者による確認などが行われず、審査が徹底されていなかった可能性とともに、マニュアルに関しても、確認項目が不十分であったという。
事後審査の対象となった6086件は、21年度末までに支払いの対象があった約405万件のうち、0.15%にすぎない。会計検査院は、事後審査の結果、対象としなかった申請に関して一定程度の不適切の支払いがあった可能性が思料できたと指摘。にもかかわらず、観光庁が事後審査の対象を拡大しなかったことを問題視し、「事前審査及びこれまでに行った事後審査は十分なものとは認められない」と断じている。
今回の結果を受け、会計検査院は観光庁に対して是正ならびに改善処置を要求。旅行事業者に対して、要件を満たしていないのに支払いがあった金額分の返還を求めることなどを求めている。
足元では、新たな観光支援策として「全国旅行支援」が開始した。今回のキャンペーンでは、適切な事務運営が行われるのだろうか。同じ過ちは許されない。
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