ところで、投資有価証券とは何なのでしょうか?
非常に大まかに説明すると、近々は売るつもりのない、もしくは(株式の持合いや戦略上の理由などのため)売ることが難しい有価証券のことを「投資有価証券」と呼びます。
そして投資有価証券の含み益が変動したとしても、営業利益や経常利益、純利益といった一般にニュースで取り上げられるような利益の額には含まれません。
通常の有価証券であれば、含み益の変化は利益に含める必要がありますが、売却予定のない投資有価証券の価格の変動は利益にしない方が誤解がないためです。
ちなみに有価証券自体は時価で評価します。これは、市場性のあるものには市場価格がある上、市場価格で評価しないと情報開示の側面からも分かりにくいためです。
このような理由で、含み益が増減したからといって利益には含まれません。それでは、含み益がどのくらいあるかを知るためにはどこを見れば良いのでしょうか?
この答えが、今回のトピックである「その他有価証券評価差額金」という項目です。
その他有価証券評価差額金の推移を見てみると、直近の22年3月期は1247億円となっており、多額の含み益を抱えていることが分かります。
20年3月期には株安を受けて764億円まで減少していましたが、その後の金融緩和による大幅な株高を受けて21年3月期には1220億円まで増加しています。
営業利益の推移を見てみると大幅減益で不調かと思われていたフジ・メディア・ホールディングスですが、資産運用会社と考えて不動産、有価証券の含み益の変化まで見てみると非常に好調な様子が見えてきます。
また、こうしたその他有価証券評価差額金の含み益の変動を含んだ業績の推移が、本稿のもう一つのトピックである「包括利益」です。
包括利益の金額は、20年3月期の172億円から21年3月期には582億円と、410億円もの大幅増益となっています。包括利益には土地の含み益の変化は載らないため、そこまで含めるとさらに好調だったわけです。
テレビ局というメディア事業としてのイメージが強いフジ・メディア・ホールディングスですが、詳しく利益の内訳を見ると、不動産に強みがある会社だという実態が見えてきます。多額の不動産と有価証券を持っており、実質的には資産運用会社と捉えることも可能です。
また、こうした資産の含み益は、普段報じられるような利益に含まれないことが多く、包括利益やその他有価証券評価差額金といった数字もチェックしてみると、違った側面が見えてきます。
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