つまり、パワハラの加害者にならないためには、いかなる場合でも感情をコントロールできる高いスキルが必要となる。そう。完璧なオトナになるしかないのです。
いかなる激情にも惑わされない知性と、事態を冷静に把握し、熟慮し、思慮分別を行える純度100%のオトナになれれば、パワハラの加害者になる心配はなくなるはずです。
ただ、私たちがオトナになるには、会社にもオトナになってもらわなくては困ります。
オトナの会社とは、
──といった、誰もが「人」としての尊厳を持ち、やりがいを感じながら働ける、元気な組織です。
「おいおい、こっちの方が私たちがオトナになるよりか、難しいでしょう?」と思う人が多いでしょう。確かにそうかもしれません。
しかし、“半径3メートル世界”ならどうでしょうか。
会社が“オトナの会社”になるには、トップの「そうしたい」という熱い思いと、鶴の一声が必要です。一方、私たちを取り巻く半径3メートルの世界=チームなら、上司がその気になれば実現可能です。
マネジメントとは、ただ人を管理することではない。身の回りにいるメンバー、つまり半径3メートル世界の仕事の仲間たちのパフォーマンスが最高に引き出される環境を整える(=マネージする)ことなのです。
人は、つい“上”に立つと、結果を出すことばかりに躍起になります。
しかし、大切なのはそこにいるメンバーと共に戦うこと。全ての人に対し「私と同じ立派な会社員」として接し、おのおのが「立派な会社員」として仕事できる環境を作ることです。
今、多くの会社では旧来の年功序列が崩れてきています。その代わりに多様性の尊重を掲げるのであれば、同時に「お互いを尊重する」という当たり前を実現できる組織を作り上げてほしいです。
今後はますます「年下上司」が増えることは必然なのですから。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
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