変革の財務経理

【インボイス制度の一問一答】休眠状態から事業再開 インボイス登録の取り扱いはどうなる?インボイスQ&A

» 2022年11月21日 09時00分 公開
[山口拓ITmedia]

 消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が令和5年(2023年)10月1日に導入されます。前回に続き、インボイス制度の中身をQ&A形式で解説します。筆者は税理士の山口拓氏。

Q32 新たに課税資産の譲渡も行う場合、登録の取り扱いはどうなる?

 当社はこれまで国内で非課税資産の譲渡等のみを行っていましたが、当課税期間からは新たに課税資産の譲渡等も行っています。取引上の都合で適格請求書発行事業者の登録申請を行うことを考えていますが、登録に関する取り扱いはどのようになりますか?

A32 非課税資産の譲渡等のみを行っていた事業者又は国外取引のみを行っていた事業者が、新たに国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合には、課税資産の譲渡等を開始した日の属する課税期間中に、その課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出して登録がされたときは、その課税期間の初日から登録を受けたものとみなされます。

Q33 休眠状態から再開する場合、登録の取り扱いはどうなる?

 当社は数年にわたって一切の事業活動を行っておらず、いわゆる休眠状態にありましたが、このたび事業活動を再開することにしました。この場合、適格請求書発行事業者の登録に関する取り扱いはどのようになりますか?

A33 その課税期間開始の日の前日まで2年以上にわたって国内で行った課税資産の譲渡等または課税仕入れ等がなかった事業者が、課税資産の譲渡等に係る事業を再び開始した場合には、その事業を再び開始した日の属する課税期間中に、その課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出し、登録されたときはその課税期間の初日から登録を受けたものとみなされます。

Q34 設立の翌年から事業を始めた場合、登録の取り扱いはどうなる?

 当社(免税事業者)は設立事業年度では設立登記を行ったのみで事業活動は行っておりませんでしたが、翌事業年度から本格的に事業活動を開始しています。この場合適格請求書発行事業者の登録に関する取り扱いはどのようになりますか?

A34 設立の日の属する課税期間においては設立登記を行ったのみで事業活動を行っていない免税事業者である法人が、その翌課税期間等において実質的に事業活動を開始した場合には、その事業を開始した日の属する課税期間中に、その課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出して登録がされたときは、その課税期間の初日から登録を受けたものとみなされます。

Q35 翌課税期間に課税売上高が1000万円以下になる場合、納税義務は免除される?

 当社は適格請求書発行事業者として登録を受けていますが、翌課税期間では基準期間における課税売上高が1000万円以下となり、かつ、特定期間における課税売上高も1000万円以下となります。この場合、翌課税期間の納税義務は免除されるのでしょうか?

A35 適格請求書発行事業者は、その登録日の属する課税期間以後の課税期間については、消費税の納税義務は免除されませんので申告納税が必要となります。

 なお、適格請求書発行事業者の登録を受けていないとすれば納税義務が免除される事業者が、その適用を受けるには、その適用を受けようとする課税期間の前課税期間の末日から起算して30日前の日の前日までに、適格請求書発行事業者の登録の取り消しを求める旨の届出書の提出が必要となります。

 ただし、経過措置の適用により免税事業者が適格請求書発行事業者となる場合には、令和5年10月1日の属する課税期間に登録を受けた場合を除き、登録日から最低2年間は免税事業者に戻ることはできません(Q16参照)。

 また、課税事業者選択届出書を提出し課税事業者となっている適格請求書発行事業者が、納税義務の免除の規定の適用を受けるには、適格請求書発行事業者の登録の取り消しを求める旨の届出書および課税事業者選択不適用届出書の提出が必要となります。

著者紹介:山口 拓(やまぐち・たく) 税理士・経営支援責任者

消費税専門税理士。また「窮地にある中小企業を1社でも多く救いたい」との使命感を持ち、売り上げアップや経営助言など中小企業に特化した支援を積極的に行っている。さらに、顧問先の税務調査の負担軽減のため税理士法上の書面添付制度を活用し、平成30年度には税務調査省略割合100%の実績を上げている。https://www.yamaguchitaku-office.com/

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