【インボイス制度の一問一答】適格請求書発行事業者をやめたら、どうなる? 登録の取り消し方法インボイスQ&A

» 2022年05月11日 07時00分 公開
[山口拓ITmedia]

 消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が令和5年(2023年)10月1日に導入されます。前回に続き、適格請求書発行事業者の登録を取りやめる方法や、登録を取りやめたらどうなるのか──など、インボイス制度の中身をQ&A形式で解説します。筆者は税理士の山口拓氏。

Q13 適格請求書の消費税額等の端数処理は?

A13 適格請求書の記載事項である「税率ごとに区分した消費税額等」に1円未満の端数が生じる場合には、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理(切上げ、切捨て、四捨五入など任意の方法)を行います。

 従って、「税率ごとに区分して合計した対価の額」に税率を乗じるなどして計算することになりますので、一の適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等として記載することはできません。

Q14 適格簡易請求書について説明してください

A14 小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業など不特定かつ多数の者と取引を行う事業者は、適格請求書に代えて次の事項を記載した適格簡易請求書を交付できます。

 適格請求書と比較して「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載を省略できる点と、「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方の記載でよい点が異なります。

  • (1)適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • (2)取引年月日
  • (3)取引内容(軽減対象資産である場合にはその旨)
  • (4)税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額
  • (5)税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

Q15 適格請求書発行事業者の登録を取りやめるには?

A15 登録の取り消しを求める旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 届出書の提出があった場合には、提出があった日の属する課税期間の末日の翌日に適格請求書発行事業者の登録は効力を失います。ただし、届出書の提出がその課税期間の末日から起算して30日前の日からその課税期間の末日までの間にされた場合には、その課税期間の翌課税期間の末日の翌日に適格請求書発行事業者の登録は効力を失います。

Q16 適格請求書発行事業者でなくなった場合は免税事業者になる?

A16 必ずしも免税事業者になるわけではありません。

 適格請求書発行事業者でなくなった事業者の納税義務は、原則として基準期間における課税売上高で判定します。ただし、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受け、登録日の属する課税期間の翌課税期間に登録を取りやめたとしても、登録日の属する課税期間の翌課税期間と翌々課税期間は課税事業者となります(課税期間が12カ月の場合)。

著者紹介:山口 拓(やまぐち・たく) 税理士・経営支援責任者

消費税専門税理士。また「窮地にある中小企業を1社でも多く救いたい」との使命感を持ち、売り上げアップや経営助言など中小企業に特化した支援を積極的に行っている。さらに、顧問先の税務調査の負担軽減のため税理士法上の書面添付制度を活用し、平成30年度には税務調査省略割合100%の実績を上げている。https://www.yamaguchitaku-office.com/

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