変革の財務経理

【インボイス制度の一問一答】適格請求書発行事業者の登録申請 条件は? いつまで? 免税事業者も申請可能?インボイスQ&A

» 2022年04月07日 07時00分 公開
[山口拓ITmedia]

 消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が令和5年(2023年)10月1日に導入されます。前回に続き、適格請求書発行事業者の登録申請は誰でも可能なのか、いつまでに申請しなければいけないのか──など、インボイス制度の中身をQ&A形式で解説します。筆者は税理士の山口拓氏。

Q7 適格請求書発行事業者の登録申請は誰でもできるのですか?

A7 登録申請書を提出できるのは消費税の課税事業者に限られます。

 消費税の課税事業者とは、消費税の申告・納税義務がある事業者のことをいい、法人の場合は原則として前々事業年度の課税売上高(消費税の課税対象となる売上高)が1000万円超、個人事業者の場合は前々年の課税売上高が1000万円超である事業者です。

Q8 免税事業者(課税事業者でない事業者)は登録申請ができないのでしょうか?

A8 課税事業者選択届の提出により課税事業者になれば登録申請が可能となります。

 ただし、経過措置によって令和5年(23年)10月1日〜令和11年(29年)9月30日までの日の属する課税期間(消費税の計算期間)中に登録申請を行う場合は、課税事業者選択届の提出は不要で、適格請求書発行事業者として登録を受けた日から課税事業者になります。

Q9 適格請求書発行事業者の登録申請はいつまでに行わなければならないのでしょうか?

A9 インボイス制度が導入される令和5年(23年)10月1日に登録を受けるためには、原則として令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。

 導入日後に登録を受ける場合には、課税事業者であれば申請期限はなく、申請書提出から約1カ月(e-Taxで提出された登録申請書については約2週間)での登録が見込まれます。

 一方で、免税事業者が上記A8の経過措置後の課税期間に登録を受けようとする場合には、課税事業者選択届出書および登録申請書を提出する必要があります。

 課税事業者となる課税期間の初日から登録を受ける場合には、その課税期間の初日の前日から起算して1カ月前の日までに登録申請書を提出し、かつ課税事業者選択届出書を提出しなければなりません。

Q10 新たに事業を開始した場合、適格請求書発行事業者の登録申請手続きはどのようになりますか?

A10 新たに事業を開始した個人または免税事業者である法人が、事業を開始した日の属する課税期間等の初日から適格請求書発行事業者として登録を受けるためには、事業を開始した課税期間の末日までに課税事業者選択届出書と登録申請書を併せて提出する必要があります。

Q11 インボイス制度の導入で事業者はどのように区分されますか?

A11 納税義務の有無と適格請求書発行の可否によって、3つに区分されます。

 インボイス制度導入前は消費税の納税義務の有無で「課税事業者」と「免税事業者」の2つに区分されていましたが、インボイス制度導入後は納税義務の有無と適格請求書発行の可否によって、「適格請求書発行事業者」「適格請求書発行事業者でない課税事業者」「免税事業者」の3つに区分されます。

Q12 適格請求書発行事業者にはどのような義務があるのですか?

A12 適格請求書発行事業者は必ず課税事業者に該当しますので消費税の申告・納税義務があります。さらに次のような義務があります。

  • (1)取引の相手方(課税事業者に限る)からの求めに応じて適格請求書を交付する義務
  • (2)課税事業者に返品や値引等の売り上げに係る対価の返還等を行う場合に、適格返還請求書を交付する義務
  • (3)交付した適格請求書の記載事項に誤りがあった場合に、取引の相手方(課税事業者に限る)に対して、修正した適格請求書を交付する義務
  • (4)交付した適格請求書の写しの保存義務

著者紹介:山口 拓(やまぐち・たく) 税理士・経営支援責任者

消費税専門税理士。また「窮地にある中小企業を1社でも多く救いたい」との使命感を持ち、売り上げアップや経営助言など中小企業に特化した支援を積極的に行っている。さらに、顧問先の税務調査の負担軽減のため税理士法上の書面添付制度を活用し、平成30年度には税務調査省略割合100%の実績を上げている。https://www.yamaguchitaku-office.com/

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