京子さんは、同僚の過度な匂わせにうんざりし、相談室を訪れました。
私がなにか話し始めると間髪入れずに、「知っています、知っています」「そうです、そうです」といつも言うんです。最初は、相づちかな? とも思ったのですが、なんか違うんですよね。“私何でも知っていますアピール”が漂ってくるんです。その証拠に、「それ私も言おうと思っていました」「私も言おうと思っていたのに先に言われちゃった」なんて言うこともあります。知らないって言えない人といることに疲れちゃって、エネルギーがどんどんなくなります。
実は彼女とはSNSでもつながっていて。本当はSNSで彼女とつながりたくなかったのに、断ることができなかったんです。職場でもSNSでも自分のすごさや幸せを匂わせてきて、もう本当に嫌です。でも、見なければよいのに、彼女のSNSが気になって見てしまう自分もいて。私、同僚がうらやましいのかな……。
京子さんは、自分を大きく見せたがる同僚の「何でも知っている匂わせ」にほとほと疲れているようでした。またその同僚は、SNSでも発信頻度が高く、誰も聞いていないのに「彼に大事にされている匂わせ」を繰り返しており、京子さんはうんざりしているようでした。
他人を見て、うらやましいと思うことはたくさんありますよね。SNSでの自慢投稿も、見たくないのにチェックしてしまうことも。私たちには、嫌いな物を見たくなる、嫌いな人に会いたくなる心の動きがあるようです。その背景には、嫌いな人を打ち負かしたい気持ちや、軽蔑することで自分の安心感を取り戻したい気持ちがあるようです。しかし、うらやましいなあと思うことと、イラっとすることとの間には、大きな距離があります。誰かの幸せそうな様子を見てイラっとしてしまうのは、2つの心の方向が考えられます。
(1)発信者側の発信の仕方に問題が生じている場合
あまりにしょっちゅう子どもの写真や幸せそうな家族の写真を投稿していると、最初は見る側もほほえましい気持ちになりますが、そのうちに押しつけがましさを感じる人が出てきます。これは、発信者側の頻度や、発信の仕方に気を付ける必要があるでしょう。さまざまな家族の形、家族の状況に置かれている人がいるのだからという想像力が必要と感じます。
(2)見る側の人が心に問題を抱えている場合
他者の投稿や匂わせにイラっとする原因は、自分の現状に納得がいかず、人のちょっとしたアピールにも敏感になり、勝手に相手をひがんでしまうという可能性が考えられます。そういった他者の幸せアピールで苦しんでいる人は、自分の心の中を静かに見つめてみる必要があるかもしれません。発信した側には、見せつける気持ちなどないかもしれないからです。しかし、イラっとしやすい、「どうせ私なんて」と落ち込むようになったら危険信号。SNSを少しお休みして、自分の心の中に問題が生じていないか確認する時間を持ちましょう。
リア充じゃない生活への欲求不満、自分にはたくさん弱点があることが認められず、劣等コンプレックスが形成されているかもしれません。(1)なのか(2)なのか、自分の心の方向はどちらなのか考えてみましょう。1人で考えることがつらい時は、私たちのような専門家をぜひ頼ってください。一緒に考えましょう。
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