青葉まつりで好評を博したことで、以降は他の祭りやイベントでたびたび出店するようになった。ひょうたん揚げは徐々に仙台市民に浸透し、もっと食べたいという声が強まった。それならばと、同社は商品としての定番化を決める。
1996年に本店をリニューアルしたタイミングで店舗内にキッチンを作り、その場で調理したひょうたん揚げを提供できるようにした。「待っていました」と言わんばかり、すぐに人気に火がついた。特に若者からの支持が大きかった。
「以前は仙台市内の中心部に高校や大学などが多かったので、学校帰りのちょっとしたおやつとして買われていました。当時は100円で手軽に買えるし、1本食べると満腹感もあります。今でも『昔、学校帰りに食べましたよ』という方によく会います」
また、当時は食べ歩きというスタイルが新鮮だった。若い女性でも気にせず、服などを汚すことなく、食べながらアーケード街を練り歩く光景が広がっていった。
こうして同社の定番商品になったひょうたん揚げだが、1年を通して多くの客が殺到するのが「仙台七夕まつり」のときだ。先述した仙台・青葉まつりと並ぶ、仙台三大祭りの1つで、毎年8月に開かれる。
「この時期は観光客も大勢来ます。七夕まつりのメインストリートに店があるので、長蛇の列ができてしまいます。その時期には駅にも臨時の売店を出し、2店舗で1日に4000本を売り上げていました」
これだけのヒット商品だと、他社もまねするのではないだろうか。ところが、そう簡単ではないと阿部社長は強調する。
「作る工程は非常に手間がかかるのと、衣を付けるのがきれいにできないはずです。他社や組合のイベントでも笹かまをそのまま串に刺して、衣をつけて揚げる商品は出していますが、ひょうたんの形にするのは技術が必要ですね。全体的なバランスを取るのはなかなかまねできないかな」
詳しくは企業秘密で明かせないと阿部社長は言うが、ひょうたん揚げのこだわりのポイントを、いくつか教えてくれた。
一つは、かまぼこもひょうたん揚げに特化したものを用意する。
「通常の表面がツルツルとしたかまぼこだと生地が流れてしまい、うまく絡みません。ひょうたん揚げ用のかまぼこを作り上げているわけですが、これも試行錯誤を繰り返して生まれました」
次に、衣の付け方だ。ここにも工夫がある。
「衣の生地を混ぜた時の粘度。その調整ですね。ゆるすぎても落ちてしまうので、粘度をうまく調整するのが難しいです。外気の温度や、混ぜ合わせる水の温度によっても変わるため、今でもその部分は苦労しています」
さらに、味付けにもこだわりがある。
「衣にはちょっと砂糖を混ぜて、甘めに仕上げています。一方でかまぼこには塩分があります。その絶妙なマッチングにも気を遣っています」
基本的なレシピは発売当初から変えていないものの、改良は常に加えているそうだ。
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