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プラスチックカップよりCO2排出量が多いリユースカップが「エコではない」と言い切れない理由なぜ?(2/2 ページ)

» 2022年12月19日 08時30分 公開
[熊谷紗希ITmedia]
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CO2排出量削減への道

 Re&Goプロジェクトは23年中に本格的な事業化を検討している。容器ごみ削減への期待は大きいが、欲を言えばCO2排出量削減においてももう一歩進展がほしいところだ。どうすれば、CO2排出量を減らせるのか? もちろん、吉村さんたちもさまざまな対策を検討しているという。

 Re&Goサービスの工程を見ながら、削減できそうなポイントを探っていきたい。

  1. ユーザーがカフェやコンビニなどでドリンクを購入する際、使い捨てカップの代わりにRe&Goのリユースカップを利用する
  2. ユーザーは利用後に対象店舗でリユースカップを返却する
  3. 輸送パートナーが定期的に店舗を訪問し、利用済みのリユースカップを回収し洗浄工場に運ぶ
  4. 洗浄パートナーが洗浄する
  5. 輸送パートナーが回収と同タイミングで各店舗に必要数を納品する
Re&Goサービスの工程(画像:NISSHA株式会社、NEC ソリューションイノベータ株式会社「ドリンク用テイクアウト容器のシェアリングサービス Re&Go 実施報告書」)

 吉村さんは、輸送パートと洗浄パートにおけるCO2排出について言及する。現在、実証実験に加盟しているコンビニやカフェなど約40店舗から週3回の頻度でカップを回収し、1時間ほど離れた洗浄工場に運んでいる。その際に排気ガスとしてCO2が排出されてしまうのだという。

 洗浄パートにおいてもCO2が排出されている。「カップは洗浄までに最大で3日間ほど期間が空く可能性があり、衛生面の観点から管理された洗浄が必要になります。その際に温水やエネルギーを使用するため、CO2発生につながります」(吉村さん)

 現在は、事業化の際の対策として「輸送ルートの短縮」「近場での洗浄」を検討しているという。回収・納品店舗から洗浄工場までの最短ルートが導き出せれば、その分環境負荷を小さくできる。また、宴会場などを所有する近場のホテルの洗浄機を利用したり、再生可能エネルギーを使用している洗浄業者と連携したりと最適な方法を模索していきたいと話す。

輸送ルートの削減や近場での洗浄などを検討していく(画像:NISSHA提供)

 使い終わったプラスチックカップをごみ箱に捨てたまさにその時、環境負荷が数値として可視化されたらごみは減るだろうか。派手で分かりやすいサービスは少なくとも、消費者の意識をごみに向けさせるきっかけにはなりそうだ。しかし、環境負荷を削減するようなサービスは一見地味で、使い続けないと効果が期待できないものも少なくない。

 「環境にいいから」という理由だけで、多くの消費者を動かすのは難しい。環境保護と経済活動を両立させるサービスには消費者に使い続けてもらう工夫が必要不可欠だ。来年の事業化でどのような仕掛けが盛り込まれるのか、期待したい。

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