苦境のジブリ美術館、クラファンなぜ伸びない? 去年は5000万円→今年は300万円しか集まらずジブリパーク盛況の陰で(1/2 ページ)

» 2022年12月23日 06時30分 公開
[濱川太一ITmedia]

 「三鷹の森ジブリ美術館」(東京都三鷹市)への寄付金額が伸び悩んでいる。コロナ禍の入館制限で大幅な減収となり、建物を所有する三鷹市は、運営を支えるため、ふるさと納税の制度を活用したクラウドファンディング(寄付の募集)を10月から始めた。しかし、目標の2000万円にはほど遠く、わずか300万円しか集まっていない。昨年の1回目の募金では5000万円近い寄付が集まったにもかかわらず、なぜ今回は伸びないのか。

「三鷹の森ジブリ美術館」への寄付金額が伸び悩んでいる(ふるさとチョイス公式Webサイトより)

 「大規模修繕の積立金復元にご支援ください」――。三鷹市が寄付の受け付けを始めたのは、10月11日。12月31日までの82日間で2000万円の寄付を目標に掲げているが、12月22日現在、集まった金額は315万円。目標金額の15.7%だ。

 同館は三鷹市が所有する。運営はスタジオジブリと三鷹市などが出資し設立した公益財団法人「徳間記念アニメーション文化財団」が担っている。

コロナ禍の打撃で積立金を取り崩し

 同館はコロナ禍で客足が激減し、収入が大幅に減少した。市はこれを補うため、21年3月、同文化財団に交付金5000万円を支出した。しかし、運営継続のため、同館は積立金の半分近くに相当する3億5000万円の取り崩しを余儀なくされた。

 市によると、この積立金は、将来想定される施設の大規模修繕に向けた大切な原資だといい、これを復元することが「施設の運営と今後の計画的な維持保全にとっての最重要課題」だという。

同館は三鷹市が所有し運営はスタジオジブリと三鷹市などが出資し設立した公益財団法人「徳間記念アニメーション文化財団」が担う(C)Museo d'Arte Ghibli

1回目は募金5000万円が集まる

 同館には、コロナ流行前は毎年70万人近い来館者が訪れていた。流行が始まった2020年度は入館制限や断続的な休館の影響で、年間来館者は約8万7000人と大幅に減少した。

 運営を支えるため、市は交付金に加え、第1回目のクラウドファンディングを21年7月〜22年1月に実施した。この時はサイト開設から1日と経たずに、目標金額だった1000万円を達成。海外からの寄付も含め、最終的には5000万円近い金額が集まった。

21年7月〜22年1月に実施したクラウドファンディングでは5000万円近い金額が集まった

 1回目とは対照的に今回、寄付が伸びないのはなぜなのか。

 市の担当者は「来館者がある程度戻り、社会の経済活動も再開し始めている中で、回復したと想像する人が多いのではないか」と話す。

 同館ではコロナ前、1日2400人を定員としていたが、20年度は半分の約1200人に絞って運営。今年度は開館時間を延ばすなどし、1日あたり約2000人に増やし、館内にもにぎわいが戻り始めた。こうしたことから、苦境の実態が見えにくくなっている可能性がある。

にぎわいが戻り始め、苦境の実態が見えにくくなっている可能性も
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