若い世代ほどアルコール離れをしている理由としては、リスク回避志向の高まりや娯楽の多様化などがあげられる。
筆者は日ごろ、世代による消費行動や価値観の違いを分析しているのだが、景気低迷の中で生まれ育った世代は、経済不安から「失敗したくない」との気持ちが強い印象がある。また、デジタルネイティブ世代であることも、この傾向に拍車を掛けているのだろう。何につけても、ネットやSNS上に流れる大量の情報から、より適切な方法を選びながら成長してきた。コスパやタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する傾向は強い。
もはや若者にとって飲酒は効率の悪い娯楽でしかないのかもしれない。酔って楽しい気分になる、コミュニケーションしやすくなるといったメリットに対して、健康への悪影響、時間やお金などのコスト、酔うことによる失敗行動のリスクといったデメリットが上回ると判断されているのだろう。さらに、いつも友人とSNSでつながっているために、わざわざ会って飲んだりしなくても、コミュニケーションが取れている環境もある。
このような中、最近では「微アルコール」が注目を集めている。微アルコールとは、アルコール度数が1%未満で税法上は清涼飲料水と同じ扱いになる飲料だ。これまでのノンアルコールは、休肝日や運転前、妊娠中など、日ごろ、飲酒をする人の飲めない時の代用品として想定され、パッケージに「アルコール0.00%」と表示するなど、アルコールが徹底的に排除されていることに価値があった。
一方で微アルコールは、アルコールが微量含まれていることに価値があり、「酔わない程度に楽しみたい」というソバーキュリアスや「体質的に弱いけれどアルコール気分を楽しみたい」という、これまで手つかずであった消費者層に評判が良いようだ。
また、微アルコールは、コロナ禍で浸透したテレワークとも相性が良いだろう。残業タイムの気分転換にはうってつけだ。
このような世の流れを見て、昔ながらの酒好きは寂しく感じるかもしれない。しかし、アルコールに強い人も弱い人も、酔って楽しみたい人も酔わずに楽しみたい人も、それぞれが好きな形でアルコールとつき合える、ダイバーシティ時代が到来したと考えてはどうだろうか。
多様な価値観を尊重することは、サステナビリティ、地球環境や社会の持続可能性を高めていくという近年の流れにも沿うものだ。
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