さて、そして最後にレースの話である。トヨタはこれまで、「モータースポーツを基準にしたクルマづくり」としてもっといいクルマづくりを進めてきた。WRCジャパンでは、それが「モータースポーツを基準にした地域振興」へと発展し、今回タイで12月17〜18日に行われた25時間耐耐久レース「IDEMITSU 1500 SUPER ENDURANCE 2022」の出場ではそれが「モータースポーツを基準とした自動車文化輸出」へと広がったと筆者は受け止めている。
カーボンニュートラルは、ともすればモータースポーツを人類の敵にしてしまう。「道楽のために無駄に石油燃料を燃やす環境破壊行為」とレッテルを貼られてもおかしくない。豊田社長はその一歩前で踏み込んだ。カーボンニュートラル燃料を使えば、内燃機関もモータースポーツも敵じゃないという主張を打ち出した。
そのために国内のスーパー耐久にカローラの水素エンジンを出場させ、スバルやマツダ、日産と仲間を募りながら、e-fuelを中心としたカーボンニュートラル燃料でのレースチャレンジを広げていった。
その後、欧州のWRCに水素エンジンのコンセプトカーを持ち込んでデモランを行ったり、今回の様に海外の耐久レースに水素エンジンコンセプトとカーボンニュートラル燃料コンセプトを持ち込んだりという具合に徐々に認知を広げつつある。
今回の参戦は、スタートからの4時間とゴール前の4時間に限った参戦ではあった。その理由は、1年間闘ってきたチームにこれ以上無理をさせたくなかったので、賞典外となる部分参戦にあえてしたのだそうだ。
しかしながら2台のマシンは、走行中、タイのトップチームのクルマと堂々渡り合い、特にGR86のカーボンニュートラル燃料コンセプトは、レース最速ラップタイムをたたき出してみせた。このレースを見たタイの人々にしてみれば、カーボンニュートラル燃料はガソリンの代用品ではなく、CO2を排出しないばかりか、従来の燃料より速く走れる未来の燃料というイメージが刷り込まれたかもしれない。
実際の話をすれば、それは燃料のせいではなく、日本のレースで磨かれてきたレース車両の完成度と、ワークスドライバーの腕があってのことなのだが。
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