となればあと必要なのはハードウェア、つまりクルマである。いすゞと日野がどの程度、幹線物流用の燃料電池大型トラックをタイに送り出せるか? そして中距離用の2トンにおいては燃料電池とBEVトラックの供給が鍵になる。つまりトヨタアライアンスのターンである。
加えて、おそらく国内におけるBEV軽トラの代わりをタイ国内で務めるのは「IMV(Innovative International Multi-Purpose Vehicle)」になるはずだ。要するにハイラックスである。物流の最もベーシックな単位を担うこのハイラックスには既にトヨタによってBEVモデルのプロトタイプが作られていた。筆者はこれにチャーンサーキットのドラッグレースコースで試乗したが、その出来は極めて上質で、物流用のみならず、個人所有車としても大きな可能性を感じた。
BEVらしく、無振動で強力な加速力を備え、もともとのIMVの出来と相まって、クルマとして極めて完成度が高い。ただしラダーフレームの間に収められるだけ収めたバッテリーの容量には限界があり、具体的な発表はないものの、航続距離は多くを望めない。近距離用途に限ったものになるだろう。そういう意味ではまさにBEVらしいともいえる。
もう一台、今回の式典で発表され、耐久レースでペースカーを務めたのが「IMV 0」(以下、IMVゼロ)である。IMVはそもそもが働くクルマ、つまりワークホースとして生を受けた。アジアの新興国のための働くクルマである。しかしながら、米国からピックアップトラックの文化が流入して、トラックを乗用車として乗る文化が入り込むと少し状況が複雑になった。
片やトラクターの仲間であり、片やクーペと同じくカッコを付けるためのクルマ。頑丈で質実剛健を求める層と、ラギットファッションのための乗用車を求める層が現れた。もう1つは安全に対する概念の乖離(かいり)である。
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