このように助走を始めた日本の消防・防災DXですが、海外の先進事例と比べれば周回遅れの印象は否めません。以下に、注目すべき海外の取り組みを3つ紹介します。
スマートフォンを使った音声・文字・画像・動画、位置情報などの送受信により、緊急対応員に正確な情報を迅速に伝えるシステム。カリフォルニア州ではクラウド(AWS)上にこれを構築し、安全性・信頼性・拡張性を備えたサービスとして実装している。
救急車で病院へ搬送中、患者のID情報から過去の医療データを確認し、リアルタイムで病院と連携しながら迅速・的確に処置を進める仕組み。行政サービスの99%が電子化されているとされる電子国家エストニアならではの先進事例。
実際に起こった火災現場での消防活動や検証データをAIが学習。火災の特性や有害物質によるリスクなど、現場に立つ消防士らに有用な情報やアドバイスを与えながら活動を支援し、隊員らの命を守るシステム。NASA(航空宇宙局)と国土安全保障省が共同開発。
これらの限られた事例から日本と海外の違いを断じるのは早計ですが、いくつかのポイントは見えてきます。
まず、海外ではビジョンが先にあり、その実現に向けてテクノロジーが進化する印象が強いのに対し、日本ではテクノロジーの成熟を待ってから具体的な取り組みが動き出す傾向が見られます。次に、海外では次世代を見据えたイノベーションに価値を置き、長期的な視点から投資を行いますが、日本の場合は短期的な効果に目を向けがちです。
もう1つ、海外はリスクテイクを前提とした合理主義、日本は変革に対して慎重に処するゼロリスク志向ともいえます。よしあしの問題ではなく、これらの特質を踏まえた日本独自の仕組みづくりを進めていく必要があるということです。
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