自治体DX最前線

今、自治体に「消防・防災DX」が強く求められている──そのワケは?(4/4 ページ)

» 2023年01月25日 07時00分 公開
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行政・企業・個人が「自分ごと」で考える防災の未来

 では今後、日本の消防・防災DXはどのような方向性で進化を遂げるべきなのか。公助・共助・自助の各方面から考えてみます。

日本の消防・防災DXは、どのように変わるべきか(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

[公助]

 労働人口の減少に伴う税収減などの環境変化もある中で、より迅速に効率よく対処できる強固な消防・防災関連システムを整備するために、中央と地方、地域と地域、行政と民間などを相互につなぐネットワーク・プラットフォームの構築が急務です。複数の自治体が協働する情報連携・広域連携により、地域防災力の強化が望めるでしょう。

[共助]

 コミュニティーの意識が希薄化し、地域活動が減少に傾く今、民間企業のCSRマインドに働きかけた防災体制づくりが求められています。一定のインセンティブのもとで企業の人的リソースやスペースを地域活動に生かすことや、避難所と物資提供のマッチングサービスといった新たな防災ビジネスを喚起することなど、共助への企業の参画を促す仕掛けが必要です。

[自助]

 今や誰もが保有するスマートフォンなどの情報端末やSNSが、有事の情報伝達に生かされていないのは残念です。有事の際に公的機関だけで情報を集めるのではなく、市民や地域コミュニティーの情報を収集・分析・利活用する仕組み、自助を誘発する仕組み、自助から共助へ広げる仕組みを整備することが重要です。行政が敷く独自の無線網だけでなく、4G/5Gの民間通信網も利用する新たな防災ネットワークを構築し、個人や企業や公的機関が1つのプラットフォームで交信できる仕組みが求められています。


 さまざまな変化がある中で公助に限界が訪れつつある以上、その役割を見直すとともに共助・自助の仕組みを強化して、三者の連携によって力を発揮する体制を築くことが、消防・防災DXの要であるといえそうです。

著者:國島常司 (くにしま・じょうじ) 

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 公共・社会インフラセクター ディレクター 

外資系コンサルティングファーム、会計系コンサルティングフォームを経て現職。中央官庁、独立行政法人、地方自治体などの公的機関に対する事業構想策定、IT・デジタル化構想策定、システム導入など多数の経験を有し、現在は、自然災害・人為災害・社会災害への対応・強靭化をテーマとするSocial Resilienceチームをリードしている。


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