昨年末はワールドカップが盛り上がりを見せました。試合内容もさることながら、全試合無料生中継を実施したサイバーエージェントの「ABEMA」にも注目が集まりました。
地上波の放送局が放映権料の高騰を受けて購入が進まない中で、放映権を獲得し全試合無料中継を実現したものでした。放映権料を広告収入で回収しきれなくなったテレビと、ABEMAのユーザー増を狙い広告費代わりに放映権を購入できたサイバーエージェント。多くの人が、動画配信のビジネスモデルの変化を実感したことでしょう。
1月はそういった変化が大きい動画配信やテレビ放送業界について、4回にわたり取り上げています。今回取り上げるのはWOWOWです。
ご存じの通り、テレビで視聴するサブスクリプション型のサービスを提供している企業です。近年はWOWOWオンデマンドというオンライン視聴可能なサービスも提供していますが、やはり視聴の中心はテレビです。今回は、テレビを利用したサブスクリプション型の動画サービスの現状を見ていきましょう。
まずはここ数年の業績の推移から見ていきます。
まず売上高と純利益の推移を見ていくと、コロナの影響が出始めた2021年3月期に売り上げは前年同期比4%減、純利益は42%減を記録。22年3月期には改善は見られるものの悪化した状況が続いていることが分かります。
加入者数は20年3月期に微減に転じ、以降は減少が続いています。
本連載で紹介してきたU-NEXTやABEMA、その他にもNetflixなどの動画配信サービスは巣ごもりによって大きな成長を遂げました。しかし、テレビ視聴を中心としたWOWOWには巣ごもりの好影響はなかったようです。
WOWOWの顧客層は比較的高年齢ですが、動画配信サービスだけでなく、YouTubeなどの利用動向を見てもこうした年齢層の動画視聴は増えています。インターネットを利用した動画視聴の時間が大きく増えたことで、ユーザーが移行してしまったと考えられます。
可処分時間には上限があります。動画配信サービスが伸びる中でテレビ視聴を中心としたWOWOWは悪影響の方が大きかったんですね。
契約のしやすさを考えても、インターネットで簡単に契約できる動画配信サービスに対して、WOWOWをテレビ視聴するにはBSアンテナの設置などが必要です。となると、巣ごもりで時間ができたユーザーが動画配信サービスを選ぶものうなずけます。コロナ禍は、アンテナ設置工事のハードルも上げました。
WOWOWは月額2530円と比較的高額です。対して動画配信サブスクは、Netflixが広告付きの安価なプランを用意しているように、サービス内容によって価格帯を複数設けて戦略を立てられます。物価高騰の中で家計がシビアな判断をする現在、WOWOWは価格面でも苦しい状況にいそうです。
それでは、直近の業績を見ていきます。23年3月期第2四半期までの業績を見ていきます。
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