わが国における“資本主義の父”、渋沢栄一。彼は現在のみずほ銀行、東京海上日動火災保険、東京証券取引所、帝国ホテルといった超有名企業をはじめとして、数百社もの設立に関わったとされる。
今回ピックアップする「東京ガス」も1885(明治18)年における政府のガス事業民営化に伴って渋沢栄一が設立に携わった、日本の礎となる企業の一つだ。彼は最高責任者として、自身の理念でもある「公益追求」を実践していた。そんな東京ガスの決算が関係者の間で話題になっている。というのも、同社は2022年10月から原油高に伴う段階的なガス料金の値上げを行っているにもかかわらず、決算が「過去最高の黒字」を更新し、利益率も大きく向上していたからだ。
東京ガスが1月31日に発表した決算見通しによれば、23年3月期の連結純利益は2360億円と史上最高の黒字になる見込みだ。従来の予想であった1180億円から、2倍近くも利益が伸びている計算になる。
しかし前年比ベースで見た純利益は2.5倍になっている半面、売上高の伸びは57%。つまり、値上げによって、同社の「利幅」が伸びているという考え方ができる。意地の悪い見方をすれば「原油高に便乗して、コスト増を大きく上回る値上げを行っている」ようにもとれる。
東京ガスによると、一般家庭における平均的なガス使用量は30立方メートルほど。この使用料を同社の料金(東京地区等)で計算すると、22年9月は5880円程度であったが、1月は7000円を超え、毎月値上がりしている。だが、ガス会社を中心としたインフラ企業は、国民生活への影響が大きいことから値上げが規制される部分もあり、いわゆる「便乗値上げ」は難しい。
そもそも東京ガスは冒頭で紹介した通り、1885年に国のガス事業が民営化して設立された株式会社ということを意識しておかなければならない。つまり、同じインフラ事業者においても、水道事業者とは異なり、「利益追求」を目的とした営利企業としての側面も併せ持っているため、利益を追求すること自体は問題がない。そして仮に、利益の源泉が企業努力やコスト合理化によるものであれば、その範囲で利益を得ることに異論は出てきにくいだろう。
同じような立ち位置として、電力事業を運営する東京電力(東京電力ホールディングス)が挙げられる。こちらは、東京ガスと対照的に厳しい決算となりそうだ。同じ「円安」「原油高」という状況でもなぜ、差が生まれたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング