ここまでいえばもうお分かりだろう。この「蔑視と偏見の構図」は、そのまま今の日本と韓国や中国へ置き換えることができる。
今や中国の電気自動車や、韓国の半導体などテクノロジー分野で日本が追い抜かされているところなど山ほどある。しかし、日本国内から出ず偏ったネットの情報をだけ入手しているような人は、「日本スゴい」という古い神話を引きずっているので、韓国人や中国人「下」に見る。そして、両国の技術力やヒット商品を聞いても「どうせ日本のパクリだろ」と思う。かつて自分たちの親世代が欧米からやられたことを、そのま東アジアの隣人たちにやり返しているという構図なのだ。
このようにかつては欧米から「パクリ大国」と蔑まれた日本だが、時を経てそのイメージが激変した。自動車や家電、アニメ、など他国発祥のものを次々と取り入れて、日本独自の進化をさせている。そのクオリティーの高さから「さすが日本」と欧米人から褒め称えられることも多い。
分かりやすいのが、コンビニチェーンだ。ご存じのようにこの業態は米国のセブン-イレブンを真似たものだが、日本のマーケットで成長していくにつれて、おにぎりや総菜、スイーツなど日本オリジナルの進化を遂げて、今では海外から訪れた外国人が「日本のコンビニはスゴい」と賞賛する。誰も「アメリカからパクったくせに自分たちでイチからつくったような顔すんなよ」なんて意地の悪いことは言わない。
実は今、世界を席巻している「K-POP」も似ているところがある。もともとかの国では、90年代まで軍事政権でエンタメ産業が発展していなかったので、日本や米国のエンタメを徹底的に学び模倣した。だから、K-POPを「下」に見ている人がいる。
しかし、K-POPは日本のコンビニ同様、市場の中で独自の進化を遂げた。韓国国内マーケットが小さいので、生きていくために海外市場を目指した。その中でも英語圏に狙いを定めて、国も「輸出産業」としてゴリ押しをした。
そうなると、アイドルも当然、英語はしゃべれるようになるし、そういう国々で好まれるダンスパフォーマンスをしなくてはいけない。それがK-POPアイドルの代名詞である一糸乱れぬシンクロダンスだ。
これを実現するためには、メンバーは数カ月に及ぶ厳しいレッスンをしなくてはいけない。そんな向上心をさらに刺激していくためにも、オーディション番組でライバル同士を競い合わせた。
そういう市場の中で独自の進化を果たした結果生まれたのが、BTSやBLACKPINKなど海外でも評価の高いK-POPグループだ。「日本のアイドルを真似た」だけで、グラミー賞にはノミネートされないのだ。
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