日本は戦前から「日本人はよその国の人々と違う特別な存在」という選民思想のクセが強い。だから、自分たちが他国を真似ることは「模倣ではなく吸収してさらに進化させているのだ」なんて感じで、自己正当化してきた。「経営の神様」として今でも尊敬する人が多い松下幸之助氏でさえ、こんな苦しい言い訳をしている。
「日本人は決して単なる模倣民族ではないと思う。吸収消化する民族である」(PHP 1965年7月号)
だが、世界を見渡せば、「吸収消化」しない民族などない。みな交流のある国の良いところを学び、吸収して、自分たちに合うようにアレンジして、社会を発展させていった。
日本人はラーメン、ギョーザ、焼肉、キムチをあたかも「日本食」のように楽しんでいるが、これは何も日本人だけがやっている特別な吸収消化などではない。他国の食文化を自国の好みに合うようにアレンジすることは珍しくなく、文明社会では当たり前のように行われている「模倣」なのだ。
「韓国でヒットしたものを日本で真似ればヒットする」と聞くと、愛国心あふれる人たちは不愉快になるかもしれないが、これを否定するということは、「模倣」で発展してきた日本人自身を否定することでもあるのだ。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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