このような話をすると、「じゃあ、ローソンストア100はどうやって儲けているんだよ。教えてくれ」と思われたかもしれない。広報の森口紫乃さんに尋ねたところ「100円おせちのために来店されて、そのついでに……というお客さまが増えてくれれば」という狙いがあるようだ。
飲食店で料理を注文したところ、店のスタッフから「コーヒーもご一緒にいかがですか?」と聞かれたことがある人も多いと思うが、同じような仕組みである。おせちを買いに来た人に対して、正月用のお酒などを提案して、購入率が高まればどうなるか。客単価がアップするので、店側にとってもメリットがある。
マーケティング用語で「クロスセル」と呼ばれる手法であるが、この流れをつくるためには、商品を提供しなければいけない。しかも、100円でだ。あれもこれも価格がどんどん上昇しているのに、なぜおせちは100円で提供できているのだろうか。
このカラクリを尋ねたところ、答えは実にシンプルである。「今年は○○個売れたので、来年は○○個くらい売れそうかな。こうした予測を立てて、発注しているんですよね。1年半ほど前からこうした準備を進めているので、取引先さまの多くは原材料を計画的に仕入れているのではないでしょうか」(森口さん)とのこと。
このほかにも、まだ3つある。1つめは、「オフシーズンの工場を活用」である。例えば、栗きんとん。北海道で水ようかんなどを扱っているところにお願いしている。普段は水ようかんやゼリーなどをつくっているわけだが、繁忙期は夏。工場の稼働率が低くなる冬に、栗きんとんをつくることはできないか。ローソンストア100の担当者はそのようにお願いして、実現にいたったのだ。
2つめは、「サイズ不選別」である。片口イワシの稚魚からつくられる「田作り」をじっくり見たことがあるだろうか。百貨店で販売している田作りは、サイズが一定していて、形も真っすぐなモノが多い。一方、100円おせちのモノは、バラバラである。選別するとなると、コストが加算されるので、不ぞろいの魚を詰めているのだ。
ちなみに、とある会社は飲食店にパエリア用のホタテを卸していた。しかし、新型コロナの感染拡大を受けて、キャンセルの連絡が相次いだ。破棄するのは、もったいない。なんとか使うことはできないか。このような話を聞きつけたローソンストア100の担当者は「であれば、おせちに」ということで、話がまとまったケースもあるそうだ。
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