ご存じのように近年、インスタグラムやツイッターでは、タレントやインフルエンサーが、企業から謝礼をもらっていながら、広告と分からないように宣伝する、いわゆる「ステルスマーケティング」が問題になっている。有名なところでは一昨年、フジテレビの女性アナウンサーの「疑惑」だ。都内の美容院で無料サービスを受けて、それを自身のSNSにアップしたことが、ステマにあたるのではないかと大きな話題となった。
このような行為を「取り締まれ」という声は、以前から寄せられていた。さかのぼれば12年、飲食店クチコミ情報サイト「食べログ」で、飲食店から費用をもらった業者が「やらせ投稿」をしていたことが発覚した際も規制の必要が唱えられた。が、喉元過ぎればなんとやらで野放しにされてきたのを、「仕事の速さ」には定評がある河野太郎氏が、消費者及び食品安全担当大臣になったことで、本格的に動き始めたというわけだ。
そう聞くと、ほとんどの人は「いいことじゃないか、じゃんじゃん規制して悪質ステマを撲滅せよ!」と諸手をあげて歓迎することだろう。
ただ、「地獄への道は善意で敷き詰められている」という有名なことわざもあるように、国家が善かれと思って進めた政策が、皮肉なことに無辜(むこ)の民たちを苦しめる……というケースが世の中には多々ある。
このステマ規制にも、そのにおいがプンプンが漂う。消費者をダマすような投稿をするタレントやインフルエンサーにお灸を据えるという「善意」を実現できる一方で、冒頭で触れたような「ステマ冤罪」を量産して、一般の人々のSNSでの自由な発信を萎縮させてしまう恐れもある。それどころか、国家がSNS言論をコントロールする「地獄」のような社会まで実現してしまう恐れがあるのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング