「ステマ規制」によってどうなる? 担当者の“冤罪”が多発する日スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2023年02月21日 09時23分 公開
[窪田順生ITmedia]

「明確なルール」が存在していない

 「たかがステマ規制でそんな大袈裟な」と感じる人もいるだろうが、筆者と同じような不安を感じている人はそれなりにいる。例えば、通販業者の業界団体「公益社団法人 日本通信販売協会」だ。今回の規制案に対して、3つの懸念点を挙げているので、それを引用させていただこう。

1.事業者だけでなく、私人・個人の憲法上の「表現の自由」を侵害するおそれ。

2.既存の適切な広告、マーケティングの委縮→消費起点の広告減少→経済への委縮効果。

3.新しい技術を生かしたマーケティング手法に足かせ→新たな経済発展を阻害。

(ステルスマーケティング規制に関するヒアリング 自由民主党 消費者問題調査会 2023年2月8日)

 なぜ同団体はこのような懸念を抱いているのか。最大の理由は、規制の網を広くかけるため「明確なルール」が存在していないということだ。「被害事例」が細かく示されていないので、事業者側は何をやればアウトで、何をやればセーフなのかがよく分からないという問題がある。

(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 例えば、ある企業がSNSユーザーを対象に自社製品を無料で提供するというキャンペーンを実施した。これは実際に使用をした感想をSNSで広めてもらおうというマーケティング施策の一環だ。その思惑はまんまと的中して、たくさんの人に拡散していった。結果、それまでこの製品のことをよく知らなかった新しい客をたくさん獲得できたとしよう。

 「よくあるSNSマーケティングでしょ?」と思うだろう。しかし、企業側からプレゼントやサンプルという「クチコミへの対価」を支払っている、と言えなくもないので、見ようによっては「ステマ」だ。前出・フジテレビの女性アナウンサーの疑惑などまさしくこれにあたる。

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