パナの「壁掛けテレビ」がじわじわ売れている “置き方”を変えたらどうなった?水曜日に「へえ」な話(2/4 ページ)

» 2023年02月22日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

開発は難航

 もう1つの特徴は、ディスプレーが薄くて、軽いこと。スピーカーボックスではなく画面自体を振動させて、音を出すシステムを採用した。結果、画面から壁までの距離は3.5センチに抑え、重さは12.5キログラムに。一般的な55型テレビに比べて、6割ほどの重さである。

スピーカーボックスをなくし、「画面振動スピーカー」 を採用

 パナソニックはその軽さを生かして、石こうボードの壁なら素人でも取り付けられるようにした。専用金具は細いピンを使って、壁に固定するだけ。10本ほど打って取り付けるわけだが、ピンが細いので壁にあいた穴はそれほど目立たないのも特徴である。

 とはいえ、「不安」を感じた人も多いかもしれない。「軽い」といっても、重さは12.5キログラムもある。サイズを考えれば、大人2人が持ち上げて、やっと設置できるといったモノである。従来の壁掛けテレビであれば、その重さに対応するために、壁に大きな金具を設置しなければいけないが、ウォールフィットテレビは丸い専用金具にピンを打つだけ。同社によると「テレビをピンでとめるのは初めての試み。やったことがないことに挑戦したこともあって、開発は難航した」という。

 壁に刺すときにピンの角度はどうすればいいのか、長さはどのくらいがいいのか、数はどうすればいいのか――。壁にテレビをかけて、何度も何度も試験を繰り返した。

専用金具

 壁掛けテレビを設置したいけれど、「工事は面倒だし」「壁に穴はあけたくはないし」「費用はかかるし」といった理由であきらめていた人も多いかもしれない。しかし、ディスプレーをピンでとめることができれば、壁掛けテレビは普及するのではないか。開発メンバーはこのように考えて、従来の金具を使わないことにしたのだ。

 「でもまあ、テレビを長年つくってきた会社なんだから、『はい、一丁あがり!』といった感じで、完成したんでしょ」と感じられたかもしれないが、違う。開発の入り口は、テレビをつくってきた会社であるにもかかわらず、ある意味“自己否定”のような形でスタートしたのだ。

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