「スパム串」が首都圏でヒット 一方、沖縄では?串に刺して焼いただけ(1/3 ページ)

» 2023年03月14日 08時00分 公開
[沖縄タイムス+プラス]
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 沖縄が全国一の消費量を誇るポーク缶詰。商品名から「スパム」や「ポーク」と呼ばれ、ゴーヤーチャンプルー、ポーク卵はもちろん、みそ汁やカレーに入っていることも。そのポークを串に刺して焼いただけの「スパム串」(1本300円)が、関東のイベント会場で飛ぶように売れている。一方、ご当地の沖縄では見向きもされずに撃沈。関東で人気の理由は? なぜ沖縄では売れない? 開発した東京の沖縄料理店を取材した。(東京報道部・照屋剛志)

始まりは終戦直後に米国から

 スパム串を考案したのは東京都港区で沖縄料理バー「MAMI-ANA(マミアナ)」を経営する上里宗平さん(46)=南風原町出身。「串に刺して焼いただけのスパム(ポーク)が、これほど売れるとは思いもしなかった」と今でも驚きを隠さない。

来場客で混み合うスパム串を販売する屋台=2019年5月

 スパムは、米国のホーメルフーズが戦前に開発したポーク缶の商品名。豚肉のミンチに香辛料を混ぜ合わせた加工肉で、沖縄ではチューリップ・フード・カンパニーのポークランチョンミートと並ぶ人気商品だ。ホーメルフーズの代理業務を担う沖縄ホーメル販促企画課次長の上原永司さんは「スパムの消費量は沖縄が最も多い」とする。総務省の2021年家計調査年報では、ポーク缶を含む「他の加工肉」の一世帯当たりの年間支出額で、那覇市が6441円と全国の県庁所在地でトップ。全国平均の2倍に上る。

 上原さんは、米軍の携行食に採用されていたポーク缶は、終戦直後に沖縄にもたらされたと説明する。物資不足の中、冷蔵庫がなくても長期保存ができる貴重なタンパク源として、生活に溶け込んでいった。今でも野菜炒めや沖縄そばの具材など幅広く使われている。上原さんは、豚肉をよく食べる食文化も普及に影響したとみる。

スパム入りフーチャンプルー(沖縄ホーメル提供)

 マミアナの上里さんが、スパム串を作ったきっかけは、神奈川県の湘南・江ノ島で海の家を開いていた2013年夏、アルバイトの一言だった。「このスパム、串に刺して焼いたら、売れますよ」。

 「まさかひやー、売れんよー(まさか、売れないよ)」。上里さんは即座に否定した。ポーク缶は塩気が強く、そのものだけだとしょっぱくて食べにくいと思ったからだ。料理の食材のひとつとして使われるが、ポークだけを食べることはほとんどない。

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