賃上げできない中小企業はどうする? 小さな保育園の「福利厚生」から学べること単なるマネはダメ(2/5 ページ)

» 2023年03月27日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

学生が企業に求めるのは「安定性」

 マイナビが毎年採用を控える学生に実施しているアンケート調査によると、15年以降、企業選びの基準に変化が出ています。

 03年卒から23年卒までの時系列のグラフを見ると、学生が企業に求める第1位は、19年卒までずっと「自分がやりたい仕事ができる会社」でした。しかし、それが逆転したのが20年卒。ここで1位に躍り出たのが「安定している会社」です。以降23年卒までトップが続いています。また、ここにきて上がってきているのが「給料のいい会社」「休日、休暇の多い会社」です。

 安定している会社とはどういったものでしょうか。1位は「安心して働ける環境である」、2位は「福利厚生が充実している」、だいぶ差があいて3位が「業界大手である」です。

 企業の魅力はいかに安心して働けるか。そのポイントは「安心して働ける環境整備」と「福利厚生」にあるようです。世の中がそれだけ不安が多く、これからどうなるか分からないという学生心理の表れともいえるでしょう。

 つまり、「いかにして働きやすい会社つくるか」を考えると、魅力ある会社になれるということです。賃上げ以外に工夫をしていく余地はまだあるのです。

 大企業も「賃上げさえすればOK」ではなく、いかに働きやすい会社にするかという「人的資本経営」に力を入れる必要があります。そうでないと、せっかくの賃上げも水の泡ということになりかねません。

働きやすい会社とは

 働きやすさを向上させるには、2つの福利厚生を整備することが考えられます。1つ目は法定福利厚生制度で、中心となるのは保険制度です。健康保険や厚生年金、雇用保険など法律で定められた企業に必要な諸制度です。これは給与と並んで従業員にとっては最低限必要な制度です。

 2つ目は法定外福利厚生制度です。これは企業が独自に定めているもので、法律で義務付けられたものではなく、企業が任意に定めるものになります。

 企業によって独自に整備できる制度ですから、社風や企業イメージに合った内容を工夫できます。そのため、企業のブランディングとしても機能する制度といえます。

 法定福利厚生が未整備の中小企業もあるので、まずはこちらを法律にのっとった形に整備する必要があります。その上で、やるべきことが法定外福利厚生の充実です。

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