最後に、ドン・キホーテの大変独自性のある取り組みを共有します。ドンキを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの取り組みには、PBにとって必要で本質的なことが全て網羅されているように思います。
同社は21年2月、ドンキのPBである「情熱価格」をリニューアルすることを発表しました。
誕生してから12年目を迎え約3900品目の規模にまで成長したPBをリニューアルしたのです。なぜリニューアルをしたかというと、発表された次のおわび文にそれが書かれています。
このたびは、弊社が独自に企画・販売しているプライベートブランド(PB)である「情熱価格」がいまひとつ面白味に欠ける普通のPBになってしまった件に関して、心よりお詫(わ)び申し上げます。
お客さまのために! と安さを追い求めた結果、気付けばドンキらしからぬ、どこにでもありそうな商品ばかりを量産しておりました。一同、猛省しております。
これからは、心機一転、PBはPBでも、自社だけでつくる「プライベートブランド」ではなく、みなさんと一緒につくる「ピープルブランド」として生まれ変わります。
安いのは当たり前。思わず手に取りたくなる「驚きのNEWS」がない商品は、発売致しません。
価格や品質に納得して買っていただくために、商品の特長はもちろん、短所があれば正直に「ぶっちゃけ」ていく所存です。
商品への「ダメ出し」も大歓迎です。積極的に取り入れて、次々と改善して参ります。
不要不急の外出がはばかられる昨今だからこそ、せめて普段のお買い物ぐらいは、ワクワクできるものにしたい。商品開発にも、安全対策にも、ありったけの情熱を注いで、お店でお待ちしています。
「PB」の常識を、どんどん変えていく。ドンキは、本気です。
顧客との共創、安さだけの商品を量産しない、顧客に驚きやワクワクを提供する――。これらはPB品に限らず、小売業が担っている役割の本質なのではないでしょうか。
その指針をこのようにおわび文として宣言していくこと自体に粋な心意気を感じます。
顧客からのダメ出しについては具体的な形として「ダメ出しの殿堂」というサイトを展開しています。顧客はここに要望を書き込むと“いいねぇ”をもらえるので、自分の投げかけた要望(ダメ出し)に共感してくれる人がどれくらいいるかを確認することもできます。
次に紹介するのは商品の一例です。こんなに長い表現が今までにあったでしょうか。
「年間売上5億円突破 ナッツを愛しすぎた担当者が独断と偏見で決めたアーモンド・カシューナッツ・くるみの黄金の究極比率 食塩・油を使わないこだわり」
「大盛り 極辛アラビアータ 辛さ15倍」〜メーカーの制止を振り切ってつくった地獄レベルのアラビアータ 食べた人誰もが後悔する辛さ〜
PBのロゴデザインもリニューアルし、22年にはグッドデザイン賞を受賞しています。
このデザインは売場で大量陳列されたときのインパクトや、英字表記も入れたことでグローバル展開も視野に入れたものになっています。商品開発からパッケージデザインに至るまで、顧客を驚かせ、楽しんでもらおうという気持ちが伝わってくる内容です。
PBは小売企業にとっての顔になるブランドです。そこに企業の顧客に対する姿勢が表れ、顧客はそれを感じ取ります。安いだけの商品を量産すると、顧客は「この企業のこだわりは価格だけか」と捉えるのです。ドンキのおわび文は、顧客視点に立ち返り、顧客と共に創っていくという覚悟を感じさせます。企業としての強い軸、コンセプトが成果につながっている、大変素晴らしい取り組みであると思います。
商品戦略の上位に位置する、企業としての主義・スタンスを見つめ直すことがPB成功の第一歩であると、各社の取り組みから感じとることができるのではないでしょうか。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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