なぜ、ドンキ「おわび文」に小売業の本質が? イオン、セブン&アイも強化するPB戦略を読み解く目指すは低価格高品質(2/3 ページ)

» 2023年03月28日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

大手3社の動向は?

 このような環境下で消費者はただ安ければいいというわけではなく、日常の中にある喜びや体験という価値も同時に求めます。つまり低価格で高品質を求めるということです。

 では大手3社がどのような方向性にあるか直近の傾向を見てみましょう。

 各社PBの売り上げは順調に拡大し、売り上げ構成比も15〜25%ほどにまで達しています。このグラフの中で2つのポイントに着目したいと思います。

 1つ目は、セブン&アイがアイテム数を減らしている点です。20年から21年にかけて約500アイテムの削減を図っています。

 これは、減退ではなく前向きな絞り込みです。同社は市場と同質化した商品や重複した商品の取り扱いを中止し、1品1品の品質向上に取り組むリニューアル計画を打ち出しています。

 品質向上と並行して、22年9月にはグループのPB「セブンプレミアム」で、求めやすい価格を追求したブランド「セブン・ザ・プライス」を新たに展開しています。エコノミーブランド「セブン・ザ・プライス」、スタンダードブランド「セブンプレミアム」、ハイブランド「プレミアム ゴールド」という階層型のラインアップに加え、「セブンプレミアム フレッシュ」「セブンプレミアム ライフスタイル」という生鮮や雑貨などテーマ特化型のブランドで多様なニーズに対応しています。

 2つ目は、イオンの17年まで減少傾向にあった売り上げがV字回復している点です。要因の一つに、差別化商品の売り上げ構成比が向上したことが挙げられます。

 差別化商品とは、「グリーンアイオーガニックシリーズ」や「やさしいごはんシリーズ」といった「ヘルス&ウエルネス」分野の商品などを指します。この差別化商品の売り上げ構成比が15年度は9.7%でしたが、17年度には27.5%に拡大しました。一概にこれだけがPB売り上げ拡大の要因ではありませんが、低価格により価値を付加しようとしていることが見て取れます。

 イオンもセブン&アイと同様に3階層のブランドを軸に展開しています。各ブランドを次のように定義しており、NBとの差別化や低価格だけではない指針が盛り込まれているのが分かります。

イオンのPB(出所:公開情報より)

 21年度におけるビール部門の構成比はベストプライスが100%でした。しかし、22年3月にトップバリュプレミアム生ビールが発売されると、たった1年でトップバリュがベストプライスの構成比を上回るほどになっています。

 地場のこだわり生鮮品(野菜、花、鮮魚など)や、地域の原材料をその地域で加工し地元で流通させるローカルPBの動向も見てみましょう。イオン東北の場合、売り上げは16年には51億円でしたが、20年には約2倍の106億円にまで拡大しています。

 イオンは22年6月に大半のPB商品を値上げせず、企業努力により価格維持すると発表しています。委託先倉庫や問屋の倉庫を介するのではなく、直接委託先倉庫に引き取りに行くことによる物流費の軽減や広告費の削減によって価格維持を図るとしています。

 このように、各社が低価格と価値の両立を図るべく、さまざまな対策を講じていることが見てとれます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.