幕張を牙城とするイオンも黙ってはいない。
去る3月18日には、JR京葉線に新駅として幕張豊砂駅が開業。「イオンモール幕張新都心」と直結され、車でアクセスするだけでなく、電車でも行けるようになった。本当に駅を降りて目の前にイオンがあり、歩いて1分もかからない。このインフラ整備は大きい。駅だけでなく、駅前広場に発着する路線バスからも、買物客がぞろぞろとモールに吸い込まれていく。
改装効果によってイトーヨーカドーに流れていた顧客も、戻ってくるだろう。
イトーヨーカドー幕張店は、JR総武線の幕張駅と京成幕張駅から徒歩圏にはあるものの、歩けば10分くらいかかってしまう。駅前で直結している店舗ではなく、駅を利用する人にとってそれほど便利とは言い難いからだ。ただし、店の周辺に住んでいる住民はよく自転車を活用して来店している。サービスで自転車置き場の前に、タイヤの空気入れも置いてあって、なかなかの気遣いだ。
イトーヨーカ堂が新しいモデル店として構築した幕張店が、幕張豊砂駅が開業した影響で閑古鳥が鳴くようだと、会社の士気にも影響してくる。物言う株主にも、納得してもらえる説明ができなくなってしまう。既に3月24日、バリューアクト・キャピタルは企業戦略の失敗を理由に、5月に開催が予定されているセブン&アイの定時株式総会で、14人の取締役のうち4人の再任に反対すると通知した。
もっとも、幕張豊砂駅が開業することは前から分かっていたことだし、イトーヨーカ堂としても想定内で、あえて環境の厳しい場所でチャレンジしたかったのだろう。
日本の流通トップ2が雌雄を決する幕張の地。イオンの大逆襲で、イトーヨーカ堂の構造改革は早くも正念場を迎えている。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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