セブン&アイの23年2月期第3四半期決算短信を見ると、売上高にあたる営業収益8兆8238億円のうち、国内コンビニエンスストア事業は6716億円(前年同期比101.5%)、海外コンビニエンスストア事業は6兆6283億円(同188.3%)だ。コンビニ、つまりセブン-イレブンは合わせて7兆2999億円となり、既に売り上げのおよそ8割を占めていることになる。
イトーヨーカドーなどのスーパーストア事業は、1兆649億円(同79.6%)。そごう・西武などの百貨店・専門店事業は、3374億円(同66.1%)。スーパーや百貨店は、コンビニが成長しているのに対して、大幅に縮小している。しかも、そごう・西武は売却が決まった。
22年同期においては、まだコンビニのシェアは半分程度だったので、着々と物言う株主の思い通りのシナリオに沿って事態が進んでいる。
また、営業利益は、国内コンビニエンスが1853億円(同104.6%)、海外コンビニエンス2275億円(同182.3%)に対して、スーパーストア13億円(同12.8%)、百貨店・専門店は約8億円の損失だった。
イトーヨーカドーなどのスーパーストアは、もともと少なかった利益が激減していて、赤字に転落しかねない状況。そごう・西武などの百貨店・専門店は赤字の額こそ前年同期の102億円から大幅に改善したが、損失が出ているのは変わりなく、売却となった。
イトーヨーカ堂のような総合スーパー(GMS)は、専門分野に特化してあらゆる商品を集めて安価に販売する、カテゴリーキラーと呼ばれる量販に、1990年代頃から圧倒されるようになってきた。そうした中で、日本の流通最大手だったダイエーの破綻も起こった。
カテゴリーキラーには、カジュアル衣料「ユニクロ」のファーストリテイリング、婦人服のしまむら、紳士服の青山商事、紳士服のAOKI、家具のニトリ、家電のヤマダデンキ、家電のビックカメラ、家電のヨドバシカメラなどが挙げられる。
さらには、家庭の生活用品はホームセンターや100円ショップ、医薬品や化粧品はドラッグストアで人々は買い求めるようになり、スーパーの役割はだんだんと食品に限定されていった。
そうした過程で、GMSは食品の分野さえも、オーケー、「業務スーパー」の神戸物産、「ラ・ムー」の大黒天物産など、信じられないほどの安さで売るディスカウントストアに押されて、存在感が薄れてきている。
しかし、イトーヨーカドーの場合は、品質の高さが支持されているセブン-イレブンと共通のPB(プライベートブランド)である「セブンプレミアム」を販売している。その効果もあり、セブンプレミアムでない商品も全般に激安ではなくても信頼されている。
欲をいえば、セブンプレミアムはセブン-イレブンのイメージが強すぎるので、「ヨーカドープレミアム」を独自に開発してほしかった。しかし、ダイエーのPBが陥ったような「安かろう、悪かろう」のイメージ(決して全部の商品がそうだったわけではない)とは違って、高品質のブランドと認知されたのが、イトーヨーカドーが今も存続できている要因ともいえるだろう。
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