イトーヨーカドー、逆転狙った「幕張店」の今 再建のカギはドラッグストア化!?長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2023年03月28日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

どうやって再建するのか

 イトーヨーカ堂が不振のトンネルから抜け出せないのは、各分野の強力なディスカウンターに顧客を奪われただけでなく、SC(ショッピングセンター)の開発に不熱心であったことが、もう1つの原因として挙げられる。

 同社がSCの開発に本格的に進出したのは、2005年に「アリオ」を展開し始めてからだ。一方、イオンが「ダイヤモンドシティ」などと名乗っていたSCの名称を「イオンモール」に統一したのは07年からだが、その頃からより一層、積極的にSC事業に取り組むようになった。

 イオンモールのモール数は199店舗(国内164/海外35)に達している(22年12月15日現在)。

 それに対して、「アリオ」は20店舗にとどまる。

イトーヨーカドーのショッピングモール、アリオ(出所:アリオ公式Webサイト)

 イオンモールのライバルとして挙げられるのは、三井不動産の「ららぽーと」だが、店舗数自体は21店(国内20店/海外1店)にとどまる。しかし、店舗数がアリオとほぼ同数であっても、ららぽーとの存在感に比べて、アリオはあまり認知が進んでいないのが実態である。

 イトーヨーカ堂がSCをおろそかにした損失がいかに巨大だったか。スーパー業界1位のイオンの連結決算を点検してみよう。

 イオンの22年2月期の決算を見ると、営業収益8兆7159億円(前年同期比101.3%)に対して、営業利益は1743億円(同115.8%)。

 内訳を見ると、総合スーパーのGMSは営業収益3兆3004億円(同 98.2%)、営業損失23億円の赤字と、赤字幅が前年より87億円改善したとはいえ、2年連続の赤字とパッとしない。

 何もGMSの不振は、イトーヨーカ堂に特有な現象ではない。イオンも苦しんでいる。

 一方、ディベロッパー事業は営業収益3667億円(同112.1%)ながら、営業利益は388億円もあり前年より31億円増えた。つまり、イオンモールの開発・運営は、イオンの総合スーパーの不振を帳消しにして余りあるほど、イオンの発展に貢献しているのだ。

 また、イオンは主に食品スーパーのSM、主にドラッグストアのヘルス&ウエルネスの分野も好調だ。

 SMは営業収益2兆5206億円(同1.1%減)、営業利益は305億円で前年より111億円減っている。しかしながらコロナ前の前々年よりは、営業収益が2.0%増えている。また、営業利益も前々年よりは140億円増であって、前年が良すぎただけで引き続き好調と目される。

 さらに、ヘルス&ウエルネスでは、イオンはクループ傘下にドラッグストア業界最大手のウエルシアホールディングスを擁している。営業収益1兆310億円(同7.8%増)、営業利益419億円は前年より3億円増と利益率は下がったが、売り上げの面では高い成長率を維持している。

 従って、イオンの例から見ても、食品分野、医薬品、化粧品、生活雑貨を販売するドラッグストアが扱う分野を強化すれば、イトーヨーカ堂の再建も見えてくるという仮説が成り立つ。

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