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「管理のための管理」をしてしまう総務に欠けている3つの視点「総務」から会社を変える(2/2 ページ)

» 2023年03月29日 13時00分 公開
[豊田健一ITmedia]
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経営目線:経営の考えをつかみ、先回りして準備する

 総務のオーナーである経営目線も、現場目線と同様に重要です。総務が社内で施策を実行していく場合、その規模に比例して、必要となる費用も大きくなっていくでしょう。一定の金額を超えれば稟議書が必要となり、場合によっては経営会議にかけられる、ということもあるかもしれません。となれば当然、経営者に決裁を仰ぐことにもなります。

 その際、経営者が考えている方向性と合致しない対案が提出されると、当然、決裁は下りません。いくら時間をかけて、入念な準備をしたとしてもです。このようなロスを起こさないためにも、経営への理解は欠かせません。

 経営を理解することで得られるもう一つのメリットは、経営者からの評価も高まり、仕事がしやすくなるという点です。総務が成果を上げることは何より、会社の成長と成果につながります

 経営目線の獲得には、経営者とのコミュニケーションが何より重要です。総務メンバーが経営者と対話することは、なかなか現実的ではないでしょうから、この役回りは総務部長の重要任務となるかと思います。随時コミュケーションを取ることで、経営者の考えをつかみ、先回りして準備、あるいは対処するのです。まさに、戦略総務的な行動でしょう。

 以上のような、現場目線と経営目線の他にもう一つ、「社会目線」の獲得が必要となります。

社会目線:「会社の常識」は時に「社会の非常識」

 会社の常識は時に、社会の非常識となりうるものです。社内では良しとされていたことが、社会の常識とは乖離(かいり)していたということです。新聞をにぎわせる会社の不祥事も多かれ少なかれ、この社会の常識との乖離が引き起こしているのではないでしょうか。

 社会目線の獲得には、社会との接点を多くすることにつきます。自社を取り巻くステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、社会目線を養うのです。社会目線を普通に持てれば、乖離があれば違和感を覚えるようになることでしょう。この違和感が総務には大変重要となってきます。

 社会目線を持ちつつ、現場をぶらぶら総務していくことで、「あれ、なんかおかしくないか?」と気付き、実態を正確に把握し、是正していく──そんな活動が社会目線での総務の仕事となってきます。大きな問題に発展する前に、違和感をキーとして、早め早めにリスクの芽をつぶしていくのは、リスク管理の基本でもあります。

 現場目線、経営目線、そして社会目線。総務の日々の業務のことだけを考えていては、到底持ちえない目線です。また、この三つの目線を持てないと、到底成果は上げられず、経営からも評価されることはないでしょう。

 総務が戦略総務になるため、そして、会社を変えるような成果を上げるためには、この3つの目線が必須なのです。

著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)

株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)『マンガでやさしくわかる総務の仕事』『経営を強くする戦略総務』


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