なぜ「サンドイッチマン」は復活したのか 辞書から消えた言葉が面白い週末に「へえ」な話(4/5 ページ)

» 2023年04月22日 09時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

「サンドイッチマン」と「サンドウィッチマン」

 冒頭で「第八版は3500語増やした」という話をしたが、その一方で「1100語」を減らしている。新しい言葉を増やすのは、想像するにあたって楽しそうである。編集会議で「なんとなくこの言葉、よく耳にするようになったよなあ」「日常的にたくさんの人が口にするようになったよね」といったやりとりをして、どの言葉を増やしていくのかを決めるそうである。

 読者からも「この言葉は知らなかった。勉強になります」「そういう意味だったのか」といった感じで、感謝されるケースが多そうだが、問題はどの言葉を削るかである。「あまり使われなくなってきたよね」「次の版でトリましょー」といった議論を重ねて、削除する言葉を決めたものの、その後の時代の変化によって使われるようになるかもしれない。実際、そうしたケースはまあまああるようで、編集サイドは胃をキリキリさせることもあるようだ。

 例えば、「サンドイッチマン」という言葉をご存じだろうか。お笑い芸人の顔が浮かんだ人も多いかもしれないが、違う。辞書には「広告板またはびらを・からだの前後に下げて(持って)歩く人」と書かれている。その昔、繁華街を歩いていると「ラーメン 500円」「アルバイト募集 時給590円」などと書かれた広告板をぶらさげている人を目にすることがあったが、いまそのような人は少なくなった。

「サンドイッチマン」という言葉は復活
海外でも,「サンドイッチマン」がいるようだ(画像:ゲッティイメージズより)

 ところが、である。サンドイッチマンという言葉は、第三版(1982年)まで掲載していたものの、第七版(2014年)で復活したのだ。カンのいい読者は、このように思われたかもしれない。「サンドウィッチマンがM-1グランプリで優勝したのは、確か2007年だったはず。お笑いコンビの名前が売れたので、『サンドイッチマン』という言葉が復活したのでは」と。

 名探偵のような推論だが、残念ながら違う。サンドイッチマンを再び掲載した理由は、いまでも見かけるから。第八版では「大正時代から見かけられ、戦後に増えた」という解説を加え、最盛期はいつかを示すことにした。

 ただ、お笑い芸人の人気が全く影響していないのかというと、そこは微妙なところ。「サンドウィッチマンの人気が出たこととは直接関係しませんが、第七版改訂のころ、耳にしたり目にしたりする機会が増えたことは、『その意味を知りたい』という需要を後押ししたかもしれません」と奥川さんは語っていた。

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