就活オワハラ、なぜなくならない? 学生に「大人の圧力」振りかざす企業の苦しい事情とは働き方の見取り図(4/4 ページ)

» 2023年04月26日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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SNSで告発される恐れも

 そして、さらに怖いのはSNSの存在。いまや、誰もが情報発信者の時代です。学生たちも例外ではありません。オワハラを受けた学生が発信した情報が広く社会の目に触れることになり、オワハラする会社というレッテルを貼られてしまうと、今後の採用活動において致命傷です。そうなると会社は、採用コストをムダにするか否かという次元では収まらないほど、大きな損害を被ることになるかもしれません。

 同じように、社会の入り口に立つ学生に“大人の圧力”をかけて、意のままに操ろうとする大人のズルい行為は、オワハラに限らず新卒採用をめぐるあらゆるシーンで見られます。例えばセクハラ。エントリーシートを添削するなどの理由をつけて採用担当者が女子学生を呼び出し、わいせつな行為をしたというとんでもない事例もあります。

学生を意のままに操ろうとする大人のズルい行為は新卒採用をめぐるあらゆるシーンで見られる。画像はイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

 また、こちらの記事(「学生の「内定辞退」阻止を狙う“後付け推薦”の実態とは? 立教大が企業に苦言)でも取り上げられている後付け推薦を求める行為なども、“大人の圧力”で学生を意のままに操ろうとしている点で、根っこは全く同じです。

オワハラが会社を滅ぼす元凶に

 オワハラやセクハラ、後付け推薦など採用担当者が“大人の圧力”を使って学生を操ろうとする行為には、すべて先ほどの表の分類が当てはまります。「退職予備軍」と「アンチ客予備軍」を増やし続けることになるだけで、百害あって一利なしです。

 自社への入社は、あくまで学生が自らの意思で選択した結果でなければならないものです。自社が選ばれるようにするために、人事部門には会社のエンプロイメンタビリティ(employmentability:会社の雇用能力)を高める取り組みが求められます。採用担当者が“大人の圧力”をかけて職業選択の自由を奪おうとする会社と“大人の包容力”で学生の意思を尊重し、後悔しない就活を後押ししてくれる会社。エンプロイメンタビリティが高く学生に選ばれる会社は、果たしてどちらでしょうか。

 いまから8年後の2041年に、大学卒業年齢に達する2018年生まれは91万8400人。これは就職氷河期世代の平均値の約半数になります。つまり、8年後の新卒採用は就職氷河期世代の新卒採用の2倍の難しさになることが既に見えているということです。それなのに、採用担当者がオワハラして会社にデメリットをもたらすような人事部門など、存在意義が疑われるのはもちろん、会社を滅ぼす元凶にさえなりかねません。

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ4万人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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