印象的だったのは、相次ぐ批判的な質問に対する寺尾社長の戸惑いの表情だった。当時の決算報告ではバルミューダフォンの発売による損失はなく、むしろプラスになるという説明だったからだ。
主に株主などステークホルダー向けの説明としては誤りではない。寺尾氏は使いやすさ重視で設計したという自社アプリも含め、初代モデルを糧にしながら開発を継続し、次世代へと生かしていこうという意欲に満ちた会見のはずだった。実際、この会見で寺尾社長は次世代モデルの開発を明言していた。
ところが発売以降、スマートフォン関連ブログなどではバルミューダフォンへの批判的な投稿が相次ぎ、SNSでも炎上。さらには決算会見でも、記者からは「バルミューダフォンだけではなく、バルミューダテクノロジーズをどのように運営していくのか?」「家電ブランドであるバルミューダ製品との差別化」「本当にバルミューダフォンの後継モデルを開発するのか?」と事業継続への疑問符を投げかける質問が集中した。
寺尾社長が浮かべた戸惑いの表情は、自身が思い描いていた“コンパクトでシンプルなデザインの、本当に使いたい機能、情報へと導いてくれる手に馴染むスマートフォン”というコンセプトやビジョンへの共感や言及もなく、ただひたすらに否定されることへの困惑からくるものだった。
実はこの会見から数カ月後、バルミューダテクノロジーズの開発にアドバイスを送っている知人に誘われてバルミューダ本社を訪問し、寺尾社長を含む方々とディスカッションをしたことがある。
これは取材ではなく、あくまでもフレンドリーシップでの意見交換の場だったため記事などにはしていないが、印象的だったのは初代バルミューダフォンで指摘されたことの咀嚼(そしゃく)を寺尾社長自身が行いつつも、オリジナルのコンセプトに自信を見せていたことだ。
一方でどのようにして“バルミューダらしさ”を表現するのかに関しては、(初代モデルにあったような)手に馴染むカーブや適度なサイズなどの要素を踏襲しつつも、当時は独自開発のアプリなどで表現したいとしていた。
バルミューダが計画する端末ロット数では、スマートフォンにとって必須要素であるカメラで使うCMOSセンサーを直接調達することはもちろん、最新センサーを搭載するカメラモジュールの調達も難しい。これはディスプレイパネルも同じだ。必然的に初代モデルと同様に、生産委託先(初代モデルは京セラ)が調達できるコンポーネントから選び、バルミューダが作りたい端末の外観設計に合わせて配置していくことになる。特別なコンパニオンチップの内蔵も難しいだろう。
現実的な値付けの端末にするためには、ハードウェアとしては中位モデルのスペックを踏襲せざるを得ないのでは? と予想された。そうしたことは寺尾氏にも話したが、独自開発アプリなどソフトウェア面とハードウェア設計の工夫などで“バルミューダらしさ”を引き出せるという考えだったようだ。
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